今、農業高校が輝いている 金足農高の活躍で弾み2018年8月31日
一過性のブームに終わらせず
いま、農業高校が注目されている。全国高校野球選手権大会で準優勝した秋田県代表の県立金足農業高校の活躍がそのきっかけだが、農業高校の存在とその価値が改めて見直されていることには間違いない。歯止めのきかない食料自給率の低下、農業従事者の高齢化と、就業人口の減少という厳しい農業環境のなかで、農業高校には将来の農業の担い手を育てるという大きな役割がある。今回の農業高校ブームを一過性に終わらせるのではなく、高校生たちの学びや活動を将来の農業、国民食料の安定に繋げるのは政府やJAグループの責任でもある。
甲子園から帰校し、校長に報告する金足農高の野球部員
(8月22日、JA秋田なまはげ提供)
準優勝した金足農高の甲子園での活躍について、全国の農業高校の校長で構成する全国農業高等学校長協会の福島実理事長(群馬県立勢多農林高・校長)は「すばらしいことだ。公立高校で農業高校であること、さらにすべて地元の出身者のチームで、全国の農業高校で学ぶ生徒に大きな励みになったのではないか」と、手放しの喜びようだ。
地元の人々には、それにも優る感動を与えており、JR秋田駅構内や商店の店頭には、今も「祝 準優勝」、「感動をありがとう」などの垂れ幕や横断幕、張り紙が目立つ。金足農高の卒業生でもあるJA秋田なまはげの吉田文勝副組合長は、「一つにまとまって戦うことがいかに大きな力を発揮するか示してくれた。今日、農業や農協の厳しい情勢のなかで、農協や組合員農家にとって大きな励みになった」という。同JAは合併初年度であり、金足農高の活躍への思いは格別なものがある。 金足農高は昭和3年(1928年)に、秋田県中央地区の産業教育(主に農業)を担う高校として創立され、平成30年で創立90周年を迎える。生物資源・農業土木・食品流通・造園緑地・生活科学の5学科があり、合計15学級で528人が学ぶ。
(写真)金足農高正門
全国的に農家出身者の割合は少なくなっているが、金足農高も例外ではない。第1、2種兼業を含めた農家出身者は36人で、全体の7%に過ぎない。だが29年度の卒業生171名のうち91名が就職し、うち38名が、自分が属する学科の関連企業・団体等に仕事を得ている。
環境土木科では採用された13名のうち、11人が測量技術を生かした職種についた。それも多くが地元の職場で、こうした実績の積み重ねが、目的意識を持った入学に繋がっている。「出身は圧倒的に非農家が多いが、学科の内容に興味を持って入ってくる生徒が多い」と、同校農場長・教科主任の宮腰明教諭はいう。
同校は使命の一つに「本県の農業を基盤とし、農業や関連産業及び生活・福祉に係わるスペシャリストとして地域社会に貢献できる人材を育成する」を挙げている。従って同校の農業クラブ活動や、課外活動は地域との繋がりが強い。
環境土木科の生徒が、建設業界や高速道路の施設における造園緑地の設計などに参加。また生活科学科では、豚とトマトをあしらったマスコットキャラクターからとった「トントちゃんクラブ」が、地元のお年寄りから郷土料理を学んだり、農場で作った野菜を「金農便」として、地域のお年寄りに定期的に配ったりして喜ばれている。
このほか、野菜苗の販売、地元小学校などへ花壇苗の供給、金農パンケーキの販売など、地域とのやりとりを通じたさまざまな活動がある。同校「校是」の第一に挙げる「寝ていて人を起こすことなかれ」、つまり自分から率先して行動する「自主」の精神が随所で発揮されている。
第2、第3の校是は「勤労を尊び、汗することをいとわぬ心を養う」、「自他の生命を尊重し、自然の営みに感謝する豊かな心を育てる」。野球部の選手たちは、いずれもこの教育方針によって育った。農場で作物を育て、家畜の世話をするなかで、こうした精神が育つ。
(写真)農場実習で勤労を尊び、汗することをいとわぬ精神が育つ(金足農高提供)
宮腰農場長は「農業はごまかしがきかない。蒔かない種は芽を出さない。つねに具体的であり実践でなければならない。農場実習では自然に対する真摯な姿勢が育つのではないか」と言う。こうした精神は甲子園の試合運び、一人ひとりの選手の態度にも窺えた。
◆ ◇
農業高校をめぐる環境の変化に対応し全国農業高等学校長協会では、平成29年に、5年先を見据えた「第3次アクションプラン」を打ち出した。「我が国の未来を担う人材を育て地域で活躍させる」行動計画で、「農業高校の価値と役割を見つめ、農業高校特有の強みは『世界規模で考え、足元から行動する学校』である」として、「グローカル・アグリハイスクール宣言」を行った。
5つの基本方針と10の行動計画からなり、農業高校のミッション(使命)として、(1)地域社会・産業に寄与する学校、(2)地域交流の拠点となる学校、(3)地域防災を推進する学校、(4)地域環境を守り創造する学校、(5)グローカル教育で人材を育てる学校―を挙げる。
また行動計画では、「地域農業の生産を支える」、「地域の農業関連産業や6次産業化に寄与する」、「地球環境を守り創造する」、「食農教育の推進」など、「地域」や「環境」が重要なキーワードになっている。同協会の福島実理事長は「食の安全、環境について、国民の関心が高くなっており、若者の農業への関心は高い。また漫画の『銀の匙』(週刊少年サンデー)を見て、女子生徒が牛や豚の世話を懸命にしている」と、かつて3K(きつい、汚い、危険)といわれた農業に対する見方が変わってきていることを指摘する。
◆「農業のプロ」誇りを
農業生産と環境問題、さらにはグローバルな視点で、GAP(農業生産工程管理)の国際基準に取り組んでいる青森県の県立五所川原農林高校の前校長で青森明の星短期大学子ども福祉未来学科 地域連携センター長・教授の山口章氏は農業高校について、「少子高齢化、人口減少、グローバル化により、日本の農業も変わっていかなければならない」と指摘。
GAP取得については、「国際水準の第三者認証GAPを学び、GAP文化をはぐくんで、プライドをもって農業のプロとして、農業関連産業に役立ててほしい。またGAP認証は取得が目的であってはならず、それを何にどう生かすかまで、高校で経験できるようにしてほしい」と話している。
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