難航課題解決の糸口見えず-TPP交渉2015年9月8日
JA全中は9月3日の理事会にTPP(環太平洋連携協定)交渉をめぐる情勢とJAグループの取り組みについて報告した。難航課題の解決の糸口が見えないまま、閣僚会合の早期開催は困難との見方が強まりつつあるが、関係国の閣僚・首脳が集まる国際会議等を注視する必要があるとしている。
7月末のハワイ閣僚会合で大筋合意に到らなかったTPP交渉は、その後も事務レベル会合や閣僚級協議が続いているが、全中のまとめでは膠着する交渉を打開する大きな進展があった状況にはないとしている。
現在残されている主要な難航分野は、ハワイ会合で対立が明らかになった▽乳製品の市場アクセス、▽知的財産分野における医薬品のデータ保護期間、▽自動車の原産地規則とされている。
これらの問題について全中は報道も含めた情勢のまとめを以下のように行っている。
【乳製品】
▽カナダはすべての交渉参加国を対象にした飲用乳、バター、チーズ等を含む幅広い乳製品を包含する生乳換算ベースの新たな関税割当を提案。
▽この提案について、ニュージーランド(NZ)や豪州は、交渉参加国のうちで米国からの飲用乳輸入が地理的条件から可能な国であれば、この仕組みは両国のチーズ、バターなどの輸出余地を減らすものだとして不満を示したという。逆に米国は割当量に不満を示したとされる。
▽日本はNZ、米国、豪州に対し、バターや脱脂粉乳の低関税輸入枠を生乳換算で計7万t程度設ける提案を行ったとされる。NZはそれを大きく上回る水準を要求し拒否したとされる。
【医薬品のデータ保護期間】
▽米国が「12年」と主張する一方、多くの国が「5年以下」と主張し対立。
▽「米国がかりに8年(等の妥協)をのむとすれば、市場アクセス分野などで議会が納得するだけの大きな成果を得る必要がある、との論調もあり、この問題での米国の譲歩の可能性は全体との釣り合いとの見方もある。
【自動車の原産地規則】
▽カナダとメキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)での自動車部品の原産地比率60%以上を要求。40~50%程度で合意された日米に反発。
▽メキシコ自動車工業会のソリス会長は日米合意について「絶対に受け入れることはできない」と主張しているとの報道あり。
▽傘下に自動車労組を抱える米国労働総同盟・産業別組合会議は8月のフロマンUSTR代表への書簡で自動車部門の強力な原産地規則を求めるなど、オバマ政権に圧力を強めている。
そのほか、砂糖の市場アクセスをめぐる豪州と米国、メキシコの対立、労働、繊維の原産地規則などでも対立が残っているという。
こうしたなか、8月26日には安倍首相とオバマ大統領が電話会談で早期妥結をめざす決意を再確認したと強調した。ただ、争点となっている乳製品、医薬品のデータ保護期間、自動車などは米国業界団体と労組の抵抗が依然として強いことから、短期間で打開するような見通しはない。
メキシコのグアハルド経済大臣は8月に交渉妥結には「数か月かかる」との考えを示したほか、カナダは10月19日の議会総選挙までは最終カードを切る情勢にはないとの報道もあり、閣僚会合の早期開催は困難との見方が強まっているとJA全中は分析している。
ただ、11月中旬にはマニラでAPEC(アジア太平洋経済協力)閣僚・首脳会合が開かれ、12月中旬にはWTO(世界貿易機関)閣僚会合も予定されていることから、こうした会合を念頭に置いた交渉動向を注視していく必要があるとしている。
JAグループは、引き続き情報収集と分析を進めるとともに、国会決議の遵守に向けた政府・与党への働きかけ、情報発信の強化に取り組むことにしている。
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