7年後に再協議-TPP協定2015年11月9日
政府が11月5日に公表したTPP(環太平洋連携)協定文には市場アクセスについて「関税の撤廃」が明記され、協定締約国から要請があれば、関税撤廃時期の繰り上げについて再協議することができる規定が盛り込まれている。
協定文の英文は全部で600ページ。全30章からなる。このほかに付属書(関税の譲許表、投資やサービスで自由化しない留保表のリスト、政府調達や一時的入国などの各国の約束表、原産地規則など)が1500ページほどある。11月5日にニュージーランド政府のホームページで公開され日本のTPP政府対策本文のページからも閲覧することができる。
ただ、協定文は現在、法律の専門家による技術的なチェックが行われており、それが終了したのと各国の署名、議会による批准手続きに入る。米国は日本時間の11月6日早朝にオバマ大統領が米国議会に協定文への署名の意向を通知した。米国のルールでは大統領の署名までに最低90日間が必要となっているが、もっとも最速で来年2月3日に米国が協定文に署名できる状況になってきた。
ただ、本紙前号で萩原伸次郎横浜国大名誉教授が指摘したように、民主党次期大統領候補のヒラリー・クリントンをはじめとして今回のTPP大筋合意に反対や批判が多くなっており批准までは不透明だ。
公表された協定文ではTPPは関税撤廃が原則であることが明確に示されている。市場アクセスについて規定しているのは第2章。第4条で「関税の撤廃」、第5条で「関税の免除」を明記している。
関税の撤廃では現行の関税を引き上げたり新たな関税を採用したりしてはならないこと、さらに自国の約束にしたがって「漸進的に関税を撤廃する」ことを規定している。さらに協定締約国のどこかが要請すれば「関税の撤廃時期の繰り上げ」について検討するための再協議を始めることができるとされている。
TPP政府対策本部によるとTPPは関税撤廃が原則のため、「再協議で想定しているのはステージング(関税撤廃までの期間と削減率など)の問題」と説明。この条文では再協議には要請があればいつでも関係国間で検討を始めることができると規定されているという。
一方、各国の関税撤廃等を約束した付属書(譲許表)では「わが国はTPP協定の効力発生から7年が経った後」、「相手国からの要請に基づき」関税やセーフガード、関税割当について再協議する条項が入っている。 TPP政府対策本部の澁谷審議官は「再協議条項が入るのはごく一般的な話。日豪EPAにも入っている」と話す。この条項は豪州、カナダ、チリ、ニュージーランド、米国との間で相互に規定する。
この再協議規定は、先に触れた第4条で、相手国の要請があればいつでも再協議できるとした条項とは別に、日本の関税削減率や、セーフガード、関税割当などの規定についての条項であって、澁谷審議官は「むしろ日本のセーフガードや関税割当のような措置については、7年後以降にするとの約束をしたもの」と、7年後まで再協議はしないとの交渉結果がこの事項に反映されたものだと強調する。
しかし、7年目には関税撤廃品目の一層の拡大、あるいは撤廃までの期間短縮などが求められる可能性はないのか。
これに対して澁谷審議官は5日の記者説明で米国のフロマンUSTR代表が「ぎりぎりのところで決着をした。仮に米国議会がいろいろいってもそれは難しい、とフロマン自身も言っている」として、非常に多岐にわたる分野についてバランスをとって決着をしたことを強調、「これまでの交渉経過をふまえると特定品目についてだけ協議することはまったく想定されない」と話した。
(写真)ホームページで公開された協定文(イメージ)
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