国 議論に応じず-TPP違憲訴訟第5回口頭弁論2016年7月25日
TPP(環太平洋連携)協定は憲法違反だとして国を訴えた裁判の第5回口頭弁論が7月20日に行われたが、これまで国側は原告側の意見や問題点の指摘に対して具体的な反論は一切行わず「実質審議」が行われていない。TPP交渉差止・違憲訴訟の会(代表・原中勝征前日本医師会会長)は、「国民の声を裁判所に届けていくことが大事だ」とさらに多くの人に関心を持ってもらうよう運動を展開する方針だ。
20日の口頭弁論では千葉県山武郡市の下山久信氏が意見陳述した。
下山氏はTPP協定によって遺伝子組み換え農産物(GMO)の表示規制などがさらに推進される懸念があることや、多国籍企業による日本の農地取得も進みかねない問題を指摘した。「(外資が)農地を取得し、日本の農家は奴隷になってしまう。企業の農業参入を促進する攻めの農業は農業衰退への道だ」などと法廷で訴えた。
また、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏は「TPPのターゲットは医療分野」と訴えた。TPP協定では、現在の薬価決定に透明性確保の名目で外資製薬メーカーが審議会等に出席できる規定が盛り込まれていることなどを指摘したほか、同様に外資による遺伝子組み換え農産物のさらなる普及が進むとして「国民の健康を守る、食生活を守るという点でしっかり司法が判断してほしい」と訴えた。
ただ、松本利幸裁判長が原告本人の意見陳述時間として認めたのは1人わずか2分だった。その後、原告代理人である弁護士からTPP協定第11章の「金融サービス」と第19章の「労働」に盛り込まれている問題点を指摘した。
金融サービス章では政府による金融安定化措置の実行を実質的に断念させられる懸念があることや、労働章では国際的に認められた労働基準を認めない内容になっていることなどを指摘した。
意見陳述に対して被告の国からの発言はまったくなかった。
松本裁判長は次回の口頭弁論前に今後の主張を取りまとめた準備書面を期限を区切って提出するよう原告に求めた。
次回(第6回)口頭弁論は11月14日に決まった。ただ、裁判長は「事前に主張を見て、さらに立証を続けるのか、裁判所として検討する」と述べた。
口頭弁論後に開かれた報告会では「次回の裁判で裁判は終わりすると言ったに等しい」との厳しい認識も示された。
しかし、被告の国はこれまで法廷ではこの訴えが訴訟になり得るのかどうかにだけ言及し、原告の指摘に対する具体的な反論はない。
報告会では「裁判官が反論させてさらにわれわれが再反論するという実質審議をさせるべき。事実関係をまったく審議しないのは裁判なのか、と広く知らせることが大切」などの意見があった。 原告は約5000人。原告はもちろん、TPPでいかに不利益を被るか、裁判所に声を届ける運動は法廷外でも一層広めていくことが必要だと確認した。
(写真)TPP違憲訴訟第5回口頭弁論の前に事前集会を開いた。7月20日東京地裁前で。
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