トキと共生する佐渡市で全国棚田サミット (2)2016年8月18日
棚田には夢がある!
-棚田の価値を知り・活かし・継承するために-
(長野県小谷村/吉田忠文)
◆棚田のまもりびとミーティング(棚田保全活動団体の意見交換会)
コーディネーターはNPO法人棚田ネットワーク代表の中島峰広(早稲田大学名誉教授)さん。
第19回サミットの山形県上山市から始まったこのセクションでは、東日本ブロック(近畿・中部・関東・東北地区)から17団体が参加。山本浩史(NPO法人十日町市地域おこし実行委員会代表)・田口譲(NpO法人恵那市坂折棚田保存会理事長)・檳田将司(NPO法人明日香の未来を創る会事務局長)さんら三人が活動報告を行ったのち地域や規模、棚田オーナー制度の取り組み状況によってA・B・Cの三グループに分かれ、同じ問題の議論を深めた。
オーナー制を始めて20年以上の地域もあり、後継者問題やオーナーの募集方法等を含めて、積極的なリニューアルを図ることなどを確認した。
◆首長会議 テーマ「自然共生社会の構築に向けて」
座長は棚田学会会長の千賀祐太郎(東京農工大学名誉教授)さん、アドバイザーに農水省農村振興局農村政策部の圓山満久地域振興課長と同課の中村弘さんが同席した。出席は19自治体。
近年、これまでの大量消費社会の反省から、持続可能な自然共生社会への転換が期待されている。とくにお金に換算できない価値を持つ棚田など里山の価値が見直されつつある。今回の首長会議では、自然共生型社会の構築に向け「外貨獲得」と「学校教育」という二つのサブテーマを設定し、現状や課題について意見交換した。
「外貨獲得に向けた取り組みとルールづくり」
次世代の担い手が不足する中、棚田等の里山景観を保全していくために「外貨獲得」の重要性が指摘されている。「お金を払っても里山を支援したい」という外部の人から、地域の商品・サービスに対して対価を払ってもらう仕組みづくりを行政がサポートすることが求められる。一方、地域住民との間に軋轢が発生することもあり、行政が介入するルールづくりも大切。各自治体から取り組み事例を発表した。
「学校教育を通じた人材育成」
里山保全に地域住民が主体的にかかわっていくためには、住民が里山を地域の宝であると考え、その価値を再確認することが必要。そのためには学校教育を通じた人材育成が重要である。会議では地域内外の子供たちに、各自治体が行っている多彩な教育の事例を共有できた。
○U30(アンダーサーティ)棚田サミット テーマ「棚田の未来を共有する~夢のある企画を考え実行しよう」
座長は高桑智雄(NPO法人棚田ネットワーク事務局長)さん、コメンテーターに基調報告の藻谷さんが同席した。
棚田の夢を広げ、具体的な行動を促すため、棚田・里山で活動する若手農家・地域おこし協力隊・自治体担当者など40人が、全員参加型の車座討論会を行った。
ここでは棚田を「日常」「学び」「イベント交流」の場ととらえ活発に発言。日常に近づけていく大切さを確認した。
各分科会終了後、大会参加者は「サンテラ佐渡スーパーアリーナ」に移動して午後6時半から全体交流会。地元の棚田米や郷土料理、地酒を味わいながら、佐渡の伝統芸能や佐賀県玄海町・佐渡市・次年度開催地である長崎県波佐見町の特産品抽選会などで疲れを癒した。
○佐渡の棚田視察と充実した交流プログラム
15日は8時半から4コースに分かれて棚田の現地視察を行う。集落の状況は省略するが、特長を概観すると――
「岩首棚田コース」
平成23年に佐渡が月本で初めて世界農業遺産に認定された要素のひとつとなった象徴的な棚田である。市から提供された廃校を利用して岩首談義所を設け、島外の大学や都市住民との交流を積極的に行っている。
○「小倉千枚田コース」
江戸時代から金銀山の発展によって開墾された急傾斜の棚田。最大5haほどあった水田は、大部分が放棄されていたが、平成20年に地域の管理組合が設立され、島で唯一オーナー制を取り入れて50aほど復田している。用水は天水のみ。
○「北田辺棚田コース」
今回の視察では唯一の北部の棚田だ。過去の地盤隆起により形成された海岸段丘をうまく活用したイネ作が行われている。トキをシンボルにしたブランド米や世界遺産米など、付加価値をつけた販売に力を入れている。
○「バスで巡る佐渡の里山・里海コース」
小倉千枚田と、トキーブランド米(里山米)の限定販売に取り組む丸山地区の棚田とともに、里海の資源である海洋深層水の施設を見学。深層水で炊いた棚田米のおにぎりを味わったが、参加者には好評だった。
(写真)「棚田のまもりびとミーティング」での協議風景
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