農業競争力強化プログラム(9~13)(下)「飼料用米」「牛乳、乳製品の生産、流通」等2016年11月25日
農業競争力強化プログラム(案)平成28年11月
自由民主党農林・食料戦略調査会
農林部会・畜産・酪農対策小委員会
農林水産業骨太方針策定PT
農業基本政策検討PT
提案された「農業競争力強化プログラム」の概要および全文は以下の通り。
9 農村地域における農業者の就業構造改善の仕組み
農業及び関連産業の所得を増大するとともに、地域社会としての農村を維持発展させていくため、農村地域工業等導入促進法(農工法)を以下のとおり見直す等により、農業者等の地域住民の就業の場を確保する。
(1)農工法の対象業種、名称
・六次産業化・地産地消法や他の地域振興法等との関係に留意しつつ、農工法の対象業種の見直しの要請に応じた所要の法整備を進める。
・その際、現行の工業等5業種に限定することなく、サービス業など農村に賦存する多様な地域資源を活用した産業も含めて、農村地域での立地ニーズが高いと見込まれる産業が対象となるよう見直す。
・対象業種の見直しを踏まえて、農工法の名称についても見直す。
(2)農工法の対象地域
・対象地域については、対象業種を工業等から広げるとしても、産業を導入する必要性の少ない地域は除外するとのこれまでの考え方に立ち、人口が集中している地域や域内の就業の場が全国平均よりも多い地域は除外する。
(3)支援措置
以下の方向により、支援措置の厚みを増すことを検討する。
・個人が産業用地に供するものとして農用地等を譲渡した場合の所得税の軽減や日本政策金融公庫による低利融資について、対象業種の見直しを踏まえた拡充を行う。
・農工法の下での税制措置だけでなく、
1.国税としては、中小企業投資促進税制、
2.地方税としては、本年7月から施行された中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の軽減措置
といった業種横断的な措置について、事業者に積極的な活用を促す。
・地方創生推進交付金など地方創生に向けた地方公共団体の取組への支援施策や、農泊の推進など地域資源を活用した産業の振興施策のほか、企業立地促進法の見直し等を通じた地域に稗益する波及効果の高い事業との連携等を図り、農村地域の雇用創出に繋げる。
10 飼料用米を椎進するための取組
(1)食料・農業・農村基本計画で掲げた飼料用米の生産努力目標の確実な達成に向けて、生産性の向上と畜産物のブランド力強化が飼料用米生産の持続可能性の確保につながる理想的なサイクルを実現する必要がある。
(2)このため、水田活用の直接支払交付金による支援とあわせて、現場で取組可能な飼料用米の生産コスト低減策をとりまとめた「飼料用米生産コスト低減マニュアル」や「飼料用米多収日本一」表彰を活用しながら、多収品種の導入、多収を実現する低コスト栽培技術の普及などを推進し、飼料用米の生産コスト低減を進める。
(3)また、耕種農家と畜産農家の連携により、飼料用米を輸入とうもろこしの代替品として利用するだけではなく、その特徴を活かして畜産物の高付加価値化を図る取組を進める。
11 肉用牛・酪農の生産基盤の強化策
12 配合飼料価格安定制度の安定運営のための施策
(1)肉用牛の生産基盤の強化
繁殖雌牛の増頭や生産性の向上により肉用牛の安定供給を確保するため、以下の取組を進める。また、畜産クラスターの構築等により、効果的に地域の収益性を向上させる。」
1.地域的な規模拡大の推進w分業体制の構築
キャトルステーション(子牛育成受託施設)の活用等生産工程の一部外部化等による地域内分業体制を構築するとともに労働負担の軽減と生産性の向上を図り、中小家族経営を含めた地域全体での肉用子牛の生産規模拡大を推進する。
2.受精卵移植技術の活用拡大
乳用後継牛の確保に配慮しつつ、交雑種雌牛の一産取り肥育(交雑種雌牛の肥育前に和牛受精卵を移植)や乳用牛への受精卵移植技術の活用を進めることにより、和子牛生産を拡大させる。
3.ICT(情報通信技術)の活用等による省力化の推進
ICTを活用した発情発見装置や分娩監視装置、哺乳ロボット等の活用により分娩時の監視等の労働負担の軽減と生産性の向上を図り、生産規模拡大を推進する。また、放牧や繁殖と肥育の一貫経営への移行により、コスト削減と生産性の向上を図り、生産規模拡大を推進する。
(2)酪農の生産基盤の強化
乳用後継牛の確保や生産性の向上により牛乳乳製品の安定供給を確保するため、以下の取組を進める。また、畜産クラスターの構築等により、効果的に地域の収益性を向上させる。
1.乳用後継牛の確保・育成の推進
性判別技術の活用や公共牧場等を活用した自家生産の取組の強化や地域内での育成体制の構築等により、乳用後継牛の計画的な確保・育成を推進する。
2.分業体制の構築・省力化の推進
コントラクターやTMRセンターの活用等生産工程の一部外部化による地域内分業体制を構築するとともに、搾乳ロボットの導入、ミルキングパーラーの整備等により過重な労働負担の軽減を図る。また、複数の農家が協業化法人を設立し、作業の効率化により生産規模拡大等を図る取組を推進する。
3.飼養管理の適正化
畜産技術者等の地域の関係者で生産関連データを共有しながら、衛生管理、暑熱対策など、適切な飼養管理方法の普及・定着を図り、乳用牛の能力を最大限発揮させる。
4.流通の効率化
中間コスト、物流コストの削減等生乳流通の効率化により、酪農家の所得向上を図る。
(3)自給飼料の増産
経営コストの4~5割程度を占める飼料費の低減が必要不可欠であり、都府県酪農における良質な粗飼料生産や乳用後継牛の育成・確保のための体制整備、労働力や飼料費の低減のための放牧の推進等、以下の総合的な国産飼料増産の取組を進める。
1.耕畜連携の強化と国産飼料の広域流通体制の構築
土地条件等の制約等から自給飼料の生産拡大が困難な状況にある地域に向けて、耕畜連携等により生産される国産飼料を供給する広域流通休制の構築を推進する。
2.公共牧場の活用拡大と機能強化
有用な飼料生産基盤であるものの十分に活用が図られていない公共牧場の活用拡大と機能強化を推進する。
3.日本型放牧モデルの推進
飼料の生産・給与や家畜排せつ物処理等の省力化が可能であり、生産コストの削減、牛の健康維持や繁殖能力の向上等にもつながる中山間の耕作放棄地等を活用した肉用牛の周年親子放牧や乳用牛の集約放牧等の日本型放牧を推進する。
(4)配合飼料価格安定制度の安定的な運営
1.補填財源の確保及び借入金の計画的な返済を促すことにより、引き続き、制度の安定的な運営に努める。
2.併せて、輸入飼料に過度に依存しない畜産経営の確立を図るため、(3)の自給飼料の増産対策を推進する。
13 牛乳・乳製品の生産・流通等の改革
(1)加工原料乳生産者補給金制度の改革
1.現在、指定生乳生産者団体に指定されている農業協同組合又は農業協同組合連合会(以下単に「農協」という。)は農業協同組合法に基づき、スリム化・効率化や共同販売の実を上げる乳価交渉の強化を図りつつ、今後ともその機能を適正に発揮することは極めて重要である。
2.その上で、指定された農協に委託販売する生産者のみに国が財政支援を行うという、現行の方式は見直し、生産者が、出荷先等を自由に選べる環境の下、経営マインドを持って創意工夫をしつつ所得を増大させていく必要がある。国は早急に基本的なスキーム(年間の販売計画等の内容、部分委託・販売に関するルール等)を設計し、関係者の意見を聞き、十分な調整を行うものとする。その際、以下の点を考慮し、十分な調整を経て改革を行うことが必要である。
○補給金の交付対象に関しては、年間の販売計画の仕組みが、飲用向けと乳製品向けの調整の実効性を担保できるものとする
○部分委託に関しては、現場の生産者が不公平感を感じないよう、また、場当たり的利用を認めないルール等とする
○条件不利地域対策に関しては、条件不利地域の生産者の生乳が確実に集乳され、不利な生産条件を補えるものとする
3.今後の補給金の交付手続等については、その円滑な運営に資するため、以下を基本として、今後、具体化する。
○補給金は、加工原料乳の生産を確保するという補給金の目的に即した基準を定め、これに該当する全ての生産者に交付する。
○補給金を農協等から生産者に交付する場合には、乳価の支払額と補給金の交付額とを生産者に明確に示す。
○補給金を受給しようとする生産者は、飲用乳、加工原料乳の年間の販売等計画及び販売等実績を国に報告する。また、生産者が農協等に委託・販売を行う場合は、農協等が自らの飲用乳、加工原料乳の年間の販売計画、販売実績及び販売コストを国に報告する。
○農協等に部分委託・販売を行う場合は、農協等と生産者との間で委託・販売に係る数量・ルール等について取り決めを行う。
○条件不利地域の生産者についても、確実に集乳が行われるようにするため、的確な集乳や集乳経費のプール処理を確保できる公正な基準を定め、これに該当する農協等に集乳経費を補助する。
(2)販売を行う農協等と乳業メーカーとの乳価交渉の改革
○現在、生乳の大宗を受託する指定生乳生産者団体が行う交渉について、乳価交渉のメンバーや交渉プロセスを抜本的に見直す。なお、農協等は自らの合理化も含め、中間流通コストや物流コストの削減を進め、生産者の所得がより向上するように対応する。
○今後、販売を担う農協等にあっては、消費者ニーズや販売動向に最大の関心を払いつつ、交渉相手となる乳業メーカーの製造コスト情報の収集・分析を含め、真に生産者のためにあらゆる手段を尽くした交渉へと改革する。また、交渉経緯や結果についての生産者に対する説明責任を十分に果たし、透明性を確保する。
○農協等が、系列の乳業メーカーに販売する場合においては、他の乳業メーカーと同等の販売先と位置付けて公正に交渉を行う。
○乳業メーカーは、自らの生産性も考慮した適正価格で安定的な生乳取引が行われるようにすべきである。
(3)酪農関連産業の構造改革
○乳業メーカーの工場稼働率を高め、我が国乳業全体の生産性を向上し、生乳価格を安定させるため、国は、国際競争に伍していける水準の生産性の実現を目指した乳業の業界再編・設備投資等を推進することとし、政府系金融機関の融資、農林漁業成長産業化支援機構の出資等による支援を行う。
○飲用牛乳・乳製品価格の安定を図るためにも、量販店等の事業再編や業界再編を推進するとともに、公正取引委員会は、量販店等の不公正取引(優越的地位の濫用による買いたたきや不当廉売等)について、徹底した監視を行う。
(4)国家貿易の運営方式の改革
○乳製品の国家貿易については、国内需要の変化に対し、より一層、機動的な対応が求められることから、最終消費者の動向を把握している様々な民間事業者からの情報収集をこまめに行うなど、適切に運営する。
○国家貿易で輸入したバター等乳製品について、売渡時に最終消費までの流通を確認する等のモニタリング強化策を徹底するとともに、適切な運用が継続されるよう、PDCAを不断に回す。
(5)酪農家の「働き方改革」
○生産者は、毎日朝タの搾乳や飼料の給与等、農業従事者の中でもとりわけ過酷な労働条件にある。国は、政府の最重要課題である「働き方改革」の趣旨を踏まえ、搾乳ロボットやパーラーなど、労働条件を大きく改善する設備投資をはじめとする労働支援を幅広い生産者が実行できるよう、短期・集中的に支援する。
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