飼料用米助成単価 断固維持を-自民党が決議2018年11月30日
自民党は11月29日の農林・食料戦略調査会と農林部会合同会合で31年産の水田農業対策として、需要にふまえた主食用米の生産と水田フル活用による自給率・自給力の向上のために飼料用米への助成金単価をはじめ戦略作物支援単価を断固維持することなどを盛り込んだ「平成31年産の需要に応じた生産対策の推進について」を決議した。
合同会合に先立つ農業基本政策検討委員会で小野寺五典委員長は「30年産は米改革の初年度として注視していたが、残念ながら主食用米の面積は増える状況になった」と指摘、天候等の問題で「全国作況「99」となったために需給のバランスが取れているが「喜んではいけない。31年産に向けて需要は10万t減と思い数字が課せられている。来年に向けて脇を締めてしっかりした体制をとることが大事だ」と強調した。
農林水産省のまとめでは主食用米の生産作付け面積は138万6000haで29年産より1万6000ha増えた。一方で飼料用米、備蓄米の作付面積が減少した。小野寺委員長は議連の会合で主食用米面積が増えたことから、需給調整は「失敗といわざるを得ない」とも話している。 この日の会合ではどういう要因で主食用米作付けが増えて、飼料用米などが減ったのか、しっかり分析することが大事だと述べた。
会合ではしっかり国が関与して需要に応じた生産による需給と価格の安定を図るべきとの意見が出された。
決議では食料安全保障を国家の基本政策として確立していく必要があると明記したうえで、米の需給と価格の安定、水田フル活用を図るためには「飼料用米推進が極めて重要である」とし、「安定的な助成体系のもと、戦略作物の単価を断固維持すること」、「水田フル活用の予算を政府は責任を持って恒久的に確保すること」を盛り込んだほか、「必要があればさらなる対応を講じること」と追加対策の実施まで求めた。
そのほか、政府備蓄米について、SBS輸入米が主食用米に影響を与えないよう「翌年産について確実に落札されるよう運用改善を行うこと」や、全国農業再生推進機構(全国組織)について都道府県再生協との連携と、政府からの情報提供による支援も求めた。農産物規格・検査の見直しについては「現行制度を堅持することを基本」とすることも盛り込んだ。
(写真)あいさつする小野寺五典農業基本政策検討委員会委員長。会合では「飼料用米の単価を見直すことになれば農家の不信招く」と強調した。
決議全文は以下のとおり。
「平成30年産の需要に応じた生産対策の推進について」
平成30年11月29
自由民主党、農林・食料戦略調査会、農林部会、農業基本政策検討委員会
米政策については、平成30年産から米の直接支払交付金及び行政による生産数量目標の配分を廃止し、生産者及び集荷業者・団体が中心となって需要に応じた生産を行うこととし、その初年度を迎えたところである。
平成30年産については、総じて需要に応じた生産が行われたところであるが、一部においては、需要いかんにかかわらず、生産が行われたと思料される産地が見られたところである。また、今後、人口減少が進展する中、米の需要減少に拍車がかかることが懸念される。
したがって、次年産について、需要動向を十分踏まえず生産されることにより、主食用米の需給が緩和し、これに伴い米価が下落するといったことがないよう、引き続き、生産者及び集荷業者・団体が一体となり、需要に応じた生産や事前契約・複数年契約などの安定取引に取り組むことが重要であり、そのための十分な環境整備を図っていくことが肝要である。
また、高齢化等による米の生産基盤の縮小や自然災害の頻発する現状を踏まえ、生産基盤や施設整備等の強化を図り、食料安全保障を国家の基本政策として確立していく必要がある。
さらに、今後の米政策の在り方について、引き続き、政府・与党一体となって検討を進めていくこととする。
以上を前提としつつ、米政策の見直しを着実に定着させ米価が安定し、農家が安心して生産できるよう、左記の対応を講ずることを強く要請する。
記
1 政府は、人口減少や経済・社会情勢の変化を踏まえ、米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針を策定したが、この厳しい需給見通しを踏まえ、マンスリーレポート等を通じた情報提供や、各都道府県・地域再生協議会ごとの作付動向等の生産現場への情報提供や認識の共有を行うこと。
2 米の需給と価格の安定及び水田フル活用を図るためには、飼料用米推進が極めて重要である。このため、米農家が所得向上を目指して自らの経営判断で作物を選択でき、また、これまで以上に需要を踏まえた生産が行われるよう、安定的な助成体系の下、戦略作物の単価を断固維持すること。さらに、その本作化に向けた水田フル活用の予算(産地交付金を含む)を政府は責任を持って恒久的に確保すること。今後の政府の対応を見ながら、必要があれば更なる対応を講ずること。また、水田活用の直接支払交付金のうち産地交付金については、高収益作物等の作付拡大を促す支援を行うこと。
3 米穀周年供給・需要拡大支援事業については、豊作や需要減少等による需給緩和に備え、生産者が安心して米生産に取り組めるよう、各都道府県での活用について周知徹底を図ること。
4 政府備蓄米については、SBS輸入米が主食用米に影響を与えることがないよう、翌年産について確実に落札されるよう運用改善を行うこと。また、TPP11協定の発効に際しては、豪州枠の輸入量の増加による主食用米の需給及び価格への影響を遮断するため、当該輸入量に相当する国産米を政府備蓄米として確実に買い入れること。
5 全国農業再生推進機構(全国組織)については、産地・生産者が中心となって需要に応じた生産を促す観点から、都道府県再生協議会との連携を図り、引き続き、政府は必要な情報提供を行うなど安定取引に向けた支援を行うこと。
6 農産物規格・検査の見直しに当たっては、現行制度を堅持することを基本とし、関係者の意見を丁寧に聴きつつ、具体的な検討を進めること。
7 米及び米加工食品(米粉、日本酒を含む)の需要拡大に向け、輸出の飛躍的拡大や中食・外食事業者等と連携した国内の消費拡大など、内外の米の新市場開拓を強力に推進すること。
以上
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