需要を見極め米生産を2019年3月25日
主食用米動向次第で過剰の恐れ
農林水産省は3月15日、平成31年産米の作付動向について第1回中間的取組状況をまとめた。それによると主食用米の作付意向は主産地で前年並みとなっている。米の消費が減少するなか、前年並みの作付けでは過剰作付けとなる懸念もある。産地に求められる対応を考えたい。
今回の作付動向は2月末現在で都道府県農業再生協議会と地域農業再生協議会から聞き取った動向をまとめたもの。数値的なとりまとめではなく2月末時点での31年産の作付け「意向」を調査した。
それによると30年産との比較による各都道府県の主食用米の作付動向は、増加傾向が1県、前年並みが40県、減少傾向が6県となった。
主食用米を増産させようという地域は鹿児島県のみにとどまり、他は前年並みか、減少させるとしているため大きな変化はないように思われるが、前年並みとしているのは北海道、東北、北陸などの主産地に多い。主食用米の消費が毎年減少していくなかで前年並みの作付けが行われれば、平年作でも過剰となる懸念がある。
ここで最近の需給状況を冷静にみておく必要がある。
30年産の主食用米の生産量見通しは国の基本指針では735万tだった。しかし、実際は733万tとなったが、これは作況指数が「98」となったためだ。JA全中によると作況が100だった場合、30年産米は743tと基本指針で示した適正生産量より8万t多くなったと試算している。
今後、適正な在庫水準(180万t)をめざすためには31年産で主食用米の全国生産量を718万t~726万tと昨年より▲7万t~▲15万t減らす必要がある。そのためには水田をフル活用して主食用以外の戦略作物に転換していく必要がある。
3月15日発表では、戦略作物の作付動向は以下のようになっている(増加傾向県◎、前年並み傾向県○、減少傾向県▲の順に県数を記載)。
<飼料用米>◎12県、○21県、▲12県。
<加工用米>◎15県、○16県、▲12県。
<WCS(稲発酵粗飼料)>◎10県、○24県、▲9県。
<米粉用米>◎13県、○21県、▲10県。
<新市場開拓米(輸出用米等)>◎23県、○12県、▲1県。
<麦>◎14県、○26県、▲6県。
<大豆>◎9県、○26県、▲10県。
<備蓄米>◎20県、○4県、▲6県。
備蓄米の取り組みは昨年よりも増加させるという県が20県となっている。ただ、買入予定数量20万9140tに対して3月5日の第3回入札までの合計落札量は13万6216tとまだ全量は落札されていない。農水省は引き続き3月26日、4月16日にも他県と競合せずに落札できる県優先枠を活用した入札を行うことにしている。
◆10a当たり所得確保
また、農林水産省は今回、産地に対して主食用米と政府備蓄米の手取額の試算を行っている。
そこでは米業界紙の落札情報をもとに、31年産政府備蓄米は税込みで60kg1万4980円として試算している。それによると集荷・保管経費など差し引くと手取額は同1万3700円程度になるとしている。
一方、30年産の全銘柄平均相対取引価格(税込、2月まで)は同1万5686円となっており、ここから集荷・保管経費などに加えて販促経費なども差し引くと手取額は同1万3700円程度となる。その結果、備蓄米は主食用米と遜色ない手取りが確保できる。
さらに10aあたりの収量が多い品種で取り組んだ場合、1割の収量アップで10aあたりの手取額は1万2000円程度上がる。試算では主食用米の10aあたり手取額が11万8500円程度(10aあたり519kg)に対して、備蓄米では同13万100円程度(10aあたり570kg)と主食用を上回る手取額が見込まれることも示している。
JAグループは3月8日のJA全中通常総会での特別決議で備蓄米のさらなる推進と、水田フル活用の政策支援を最大限活用した飼料用米をはじめとして非主食用米への転換を進めることを決めた。
国内の主食用米の需要は毎年減少しているのが現実。3年後には需要量が700万tを下回ることも想定される。適正な生産が行われなければ米価下落と農業所得の減少を招きかねない。実需者と結びついた主食用生産と、交付金など政策支援を活用して非主食用生産に取り組み「10aあたりの所得確保」をめざす取り組みが求められている。
(関連記事)
・主食用米以外の推進を-JAグループの31年産方針(19.01.18)
・31年産米 前年比で最大17万t減-適正生産量(18.11.29)
・【米生産・流通最前線2018】30年産米 卸はどう対応するのか?(18.11.14)
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