農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
【提言】リーダーはミッションで動け(下) 石田正昭・龍谷大学農学部教授2016年10月11日
総合農協の発展なくして地域社会の発展なし
反復的にワークショップ
関係者みんなが意思共有
・「農協の使命」つねに考察
・ビジョン提示権限を委譲
◆地域に固着の農協問題
そのビジョンについてだが、その農協の置かれた地域環境で異なる。北海道と都府県、都市と農村、平地と中山間地で異なるのは当然だ。JA三原(広島県)の西原常雅組合長は、わがJAには3つの農協問題があると明言する。
一つは島しょ部で、地域特産物のレモンで活気づいているが、経営基盤はぜい弱。もう一つは都市部で、経営基盤はしっかりしているが、信用・共済事業依存で、准組合員も多い。最後の一つは中山間地で、そこでは過疎化が進行し、組織基盤の縮小に直面している。
地域に固着する、これらの問題はJA三原の中だけではなく、広島県全体、あるいは日本全体にも同じように適用できる。たまたまJA三原は、これらの問題が複合的に生じているだけなのだ。これらの問題にどう立ち向かうのか、これがそれぞれの農協リーダーに問われている。
たとえば、北海道や沖縄で「善し」とされるものが、東京では「善し」とはされない。甘蔗やビートを売るために、産地の農協が加工場を設けるのは当然だ。また、野菜や果実、花きを遠く離れた消費地へ輸送するために、共販をとるのも当然だ。しかし、これと同じことを東京でやる必要はない。生産者自らが販路を確保できるからだ。東京では数ある販路の一つとして差別化された農協直売所を設けるとともに、ビジネスマッチングを基本とする営農相談、経営相談にシフトするのがよい。生産者が個人では解決できないことをする、これが協同のビジョンの基本となる。
◇ ◆
個人でできることは個人で解決する、個人でできないことは地域社会や農協で解決する、地域社会や農協で解決できないことは連合会・連合組織で解決する。この仕組みを「補完性の原理」と呼ぶ。補完とは「足りないところを補って完全にする」という意味があるが、これは、問題解決はより身近なところから始めるのが望ましいという考え方に基づいている。
とすれば、農協リーダーがなすべき最初の仕事は、個人でできないことは何か、地域社会でできないことは何か、そして自らの農協でできないことは何かを徹底的に詰めていくこと。その中から農協がしなければならないことが見えてくる。そのことをリーダーだけが考えるのではなく、関係者みんなが考え、共有する。それには地域の活動家や各界の経営者、識者を話題提供者とするワークショップ(相互討論の場)を、組合員と役職員参加のもとで反復的に開催することが求められる。他の協同組合と比べて農協に決定的に欠けているのは、この種のワークショップの開催なのだ。
総合農協は、専門農協とは異なる。どういう点で異なるのかといえば、専門農協は「農業経営」の延長線上に位置づくが、総合農協は「農家経済」の延長線上に位置づくということ。農家経済は生産と生活が一体化し、それゆえに地域社会と密接なつながりを有する。このつながりのゆえに、総合農協の発展なくして地域社会の発展はなく、地域社会の発展なくして総合農協の発展はない、という命題が得られる。
・【提言】リーダーはミッションで動け(上) ◆まやかしの「農協改革」
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