農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
わが家の自給、地域の自給、そして国の自給へ ~JAは地域社会の守護神~1【星 寛治(高畠町)】2018年10月3日
特集企画「自給率38% どうするのか?この国のかたち…」では、戦中・戦後の食糧難のなかで「飢餓」を体験した方々にその歴史から何を学び、今日の状況に生かすのかを聞いた。今回は、山形県置賜で活躍している作家・星寛治さんにご執筆いただいた。なお、読みやすいように3つに分割して掲載しましたので、ゆっくりと最後までお読みください。
◆気象異変と大災害の狭間で
東日本大震災から7年半が経った。その傷痕が未だ癒えぬ今年、往時を想起させる自然災害が列島各地で起きた。夏の記録的な猛暑に続き、西日本の集中豪雨禍、台風21号の桁外れの暴風、そして北海道の激震と地滑りなど、住民は塗炭の受苦の中にいる。
自然を相手の農業にとって、気象異変のひん発は、大きな脅威であり、そのダメージは計り知れない。人々の食料の確保と生活維持に直結し、そして中期的には国の自給力に大きな影響を及ぼす要因になろう。
今日、途上国を中心に、8億人余が飢餓線上にあるといわれている。また、格差が拡大する先進国でも、飢えは他人事ではない。わが国でも、6人に1人の子どもたちが、栄養不足の状態だという。
◆ひもじさに耐えた少年期
1935年(昭10年)生れの私は、物心つく頃には戦時体制の中にいた。3歳の時に父が出征し、母と祖父母に家族を守る重荷がのしかかった。国民学校に入学したのは、太平洋戦争に突入した翌年で、布の鞄や再生ゴムの靴をまとい、2kmの道を通学した。
校庭では、連日軍事教練が行なわれ、若い志願兵の壮行会も続いた。戦火が激しくなるにつれて、B29の空爆が東北地方にも及び、空襲警報のサイレンが鳴ると防空頭巾をかぶり、裏の林に逃げ込んだ。間もなく都会から疎開した児童で教室はあふれ、すし詰め状態になった。とりわけ食料難は、田舎でも深刻になり、弁当を持てない子が沢山いた。
農家でも、供出米を賦せられ、ほとんどかて飯など粗食に甘んじた。だから、育ちざかりでも栄養失調気味で、子どもたちの多くは背が低いまま年を重ねた。高学年生も、連日勤労奉仕にかり出され、教室で学ぶ時間さえ持てなかった。戦争は、子どもの学習権も奪ったのである。さらに疎開の流れは、子どもたちに留まらず、家族はそれぞれに伝手(つて)を頼って田舎に向った。童話作家浜田広介も、故郷屋台村(現高畠町)に身を寄せた。村の友人、知人は、折節に食べ物や日用品を届けた。広介は飢えずに暮らせる身の感謝を込めて、「頂戴録」と題するノートに丹念に記録した。
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