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【座談会】思いを馳せた「近代化」幻惑され影を見落とす(上・4)2019年1月8日

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・「現代の老農」に聞く農と地域・食といのちの未来

【座談会出席者】
・星寛治氏(農民・詩人)
・山下惣一氏(農民・作家)
・大金義昭氏(文芸アナリスト)

 「老農」とは明治時代の経験に富んだ在来農法による農業指導者のことを言う。現在は栽培技術のマニュアル化が進み「老農」の出番はなくなったかのように見えるが、農業を支える農村社会そのものが崩壊しつつあり、今日的な農業・農村のリーダーが求められる。その意味で、「現代の老農」ともいえる存在で、農民であり作家の山下惣一さんと、同じく詩人の星寛治さん、それに文芸アナリストの大金義昭さんに登場していただく。

「近代化」とは「工業化」
土づくりから有機農業

 

  ところで、そのリンゴが10年目の花の時期にモニリア病に冒され、1㌶の「ふじ」が代掻きの最中に全滅したんです。結局、功を焦りすぎて有機肥料の他に化学肥料も施し、その過重な負担が、木を軟弱徒長に育て、病気に弱い体質にしてしまった。それに気づいて改めて出直しだと思い、土づくりに取り組もうと考えたのが、生産面で有機農業に転換していくきっかけとなったんです。

 

大金義昭氏(文芸アナリスト) 大金 複合経営の確立に試行錯誤しながら、有機農業の端緒に辿り着いた経緯が良く分かりました。

(写真)大金義昭氏

 

 山下 そこで私にちょっと言わせて。今になって思うことは結局、農業の「近代化」とは、工業化のことですよ。工業的生産システムに変えていくために、先ずは単作化しなければ機械化できない。単作にする、機械化する、規模拡大するとどうなるか。投資額や装置が増えて、うまくいかなくなったら、路線変更も引き返すこともできない。つぶれるしかない。だから、「近代化」のいちばんの反省は単作化ですね。
 金を稼ぐという方向でそうなるわけだから、金を稼ぐのではなく、暮らしていく方向で農業を考える。考えてみたら、周りはどんどん「百姓」をやめていくじゃないですか。消費者ばっかりいるわけですよ。だから、近くの消費者とつながっていけば、九州の方は一年じゅう農作物が作れて、野菜だけでも150種類くらいあるんだから生きられないことはない。
 そういうことに気づいたのは、50くらいのころかな。子供に金が要らんようになって、私が目ざしたのは「金の奴隷にならない。金のためには働かない。女房にぜったい後悔させない」(笑い)農業でした。女房には苦労をかけ続けたからね、私は申し訳なくて。

 

 大金 星さんは慣行農法の改革に挑戦し、「近代化」農政に向き合っていくということですか。

 

 山下 あれがあるんですよ、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』。それと有吉佐和子の『複合汚染』がね。

 

  『沈黙の春』は、今ふれた自分の生産現場の問題だけでなく、連作障害とか病虫害のダメージとかが一気に広がってくる。それと合わせて環境異変が起こってくる。水棲生物などがことごとく死んでしまって、それこそ虫も鳴かず鳥も飛ばない農村になってしまったんです。「近代化」の光と影が一気に襲い、その光の部分に幻惑されて影の部分を見落としていた反省が生まれた。いちばん大事ないのちと健康に深刻なダメージを受けることになってしまった。ですから、健康と環境と「百姓」としての本来の自立を取り戻すために、思い切った発想の転換を遂げていかなきゃいけないというのが、オルタナティブな、つまりもう一つの道の選択肢につながっていくわけです。

 

 山下 水田除草剤でいちばんひどかったのはPCPですよね。それにニカメイチュウを殺すホリドール。川が真っ白になるほど、毎日まいにち魚が浮いて流れるんです。それでも、うちの方では誰も有機農業をやる人がいなかった。私もミカンでは食えなかったから、タバコ栽培をやりながら、米や野菜は有機農業というのが、いかにも矛盾しているように思えてやらなかった。要するに、やる気がなかった。だから、星さんにはいつも言ってきたんですが、「勇気」がなかったから、「有機」をやらなかったとね。(笑い)

 

 大金 しかし、暮らしのための小農・複合経営に取り組みながら、お二人は同じような路線を歩んでいくように見えるんですが。星さんは、村では相当の変わり者と見做され、「村八分」などにも見舞われたんじゃないですか。

 

  おっしゃる通りですね。親の世代は、全く相手にしてくれなかった。せっかく大変な思いで前近代的な状態から頑張って抜け出してきたのに、それをまた元に戻すなんて、いったい何を考えているんだ。頭がおかしくなった連中ではないかと思われました。

 

山下夫妻 山下 それと難しいのはね、農村共同体は田んぼの水を共同で使用しているから、自分の水じゃない。となると、みんなに合わせていかなきゃダメで、私に勇気がなかったのは、国や農協の言うことには反発できるけれども、隣と違う農業をするのは非常に難しかった。

(写真)山下夫妻

 

  それでも山下さんの棚田やミカン園をつぶさに見せていただいて、ミカン園の土などを踏むとフカフカしているんですね。ご本人は「有機農業は嫌いだ」と言っていたけれど、20年も堆肥をベースに土づくりをしっかりしてきたことが、生産現場から良くうかがえるんですね。実際におやりになっていることは、私と全く同じなんだなあと、大変嬉しかったですよ、本当に。
 およそ半世紀に渡り、私は地域の仲間と共に有機農業に地道に取り組んできましたが、農政の方向は、環境に優しい持続的な生産のあり方を積極的に推進しようとはしていませんね。

 

 山下 全くその通り。つぶそうとしています。

<各氏の経歴>

星 寛治 氏
 1935年9月生まれ。山形県高畠町在住。米やリンゴなどを作る。73年に高畠町有機農業研究会を創設して農法改革と生消提携を推進し、日本の有機農業運動の魁となる。高畠町教育委員長、東京農大客員教授などを務める。主著に詩集『滅びない土』『農業新時代』『有機農業の力』『農から明日を読む』詩集『種を播く人』など。

 

山下 惣一
 1936年5月生まれ。佐賀県唐津市在住。米とミカンなどを作る。『海鳴り』で日本農民文学賞、『減反神社』で地上文学賞、直木賞候補に。アジア農民交流センター代表、農と自然の研究所理事などを務める。著書は『ひこばえの歌』『農家の父より息子へ』『身土不二の探究』『農業に勝ち負けはいらない!』『市民皆農』など多数。

 

大金 義昭
 1945年8月生まれ。栃木県宇都宮市在住。社団法人家の光協会編集局長、JICA専門家などを務める。主著に『野男のフォークロア』『農とおんなと協同組合』『風のなかのアリア~戦後農村女性史』『評伝宮脇朝男』『常野記』など。

 

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【下に続く】

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