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かんきつ園でドローンによる防除を実演 2019年8月30日

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 かんきつの収穫量が43年連続日本一の“柑橘王国愛媛”が、ドローンを活用した防除の実用に向けて一歩を踏み出した。愛媛県は8月28日、かんきつ園におけるドローン利用拡大研修会を松山市の果樹研究センターで開催。生産者、農薬メーカーなど178人が見守るなか、3機のドローンによる防除実演フライトセミナーも行われた。

かんきつ防除ドローン01愛媛県果樹研究センターで行われた防除実演フライト


 愛媛県は今年度、「ドローン防除農薬適用拡大普及事業」を新たに創設し、研修会や実演フライトセミナーの開催、薬剤の適用拡大に向けた試験を開始。8月8日に宇和島市で行ったセミナーには50人の予想を大きく上回る121人が参加し関心の高さを見せた。
 その大きなきっかけとなったのは、急傾斜地にあるみかん園が大打撃を受けた昨年7月の西日本豪雨災害。スプリンクラーが破損、農動もふさがり、動力噴霧器による手散布の防除も困難ななかで行われたドローンによる防除が注目を集めた。
 愛媛県農林水産部農業振興局農産園芸課の奈尾雅浩主幹は、「県内のかんきつ園では手散布による防除が過半数を占めている。夏場の防除では、作業者の負担軽減と省力化の観点から、ドローンによる体系防除を是非とも実現させたい」と説明。
 現状では、かんきつの登録薬剤は2剤しかないため、体系防除を組むことができない。また、平面的な水稲と違い、複雑な樹形や傾斜地での散布方法の改善、適切な投下薬液量など、かんきつ防除でドローンを利用する際にクリアすべき問題点は少なくないが、「困難な課題に県が挑戦することに産地を牽引する意味がある。我々の総力を挙げて邁進していきたい」と奈尾さんは意気込みを語った。

 セミナーでは、農林水産航空協会の柳真一調査研究部長が、無人航空機による防除の現状と課題を紹介した。また、平成29年度から傾斜地果樹でドローンを活用するための試験を開始した和歌山県果樹試験場の熊本昌平主任研究員は、葉の表裏に均一に薬液を付けるために試行錯誤しながら進めている傾斜地での病害防除などを報告。「ドローンは平面に均一にまくことは得意。明確なデータはないが、その特性を活かしてドリフト(飛散)を使うと横や斜めから薬剤が入り、均一に散布しやすいことがわかってきた。ほ場外への薬剤の飛散という問題は残るが、薄く何回も塗りなおすような感じになる」と説明した。

かんきつ防除ドローン02かんきつ防除ドローン03

超微細噴射が可能なアドマイザーで散布するXAG社の「P20」/高度維持センサーを搭載したTEADの「TA408」

 防除の実演フライトでは、XAG、TEAD(テッド)、DJIの3機種のドローンによる最新の散布技術を紹介。昨年11月から中国のドローンメーカー・XAG社と共同事業を始めたバイエルクロップサイエンスは、果樹モード機能を搭載したXAG社の自動航行ドローン「P20」による散布を実演。円盤を回転させながら微細に噴射できるアドマイザーを備え、4枚のプロペラで強力なダウンウォッシュを発生させて、葉をひらひらと揺らしながら散布する。
 一気に18mまで浮上すると最初の木にゆっくりと向かい、3mほどの高さまで降下して散布を開始。階段状になった傾斜のあるほ場を1段ずつ下りながら、直径が1m以上の木には、らせん状に回って幅広く散布し、1m以下の低い木にはホバリングでクルクルと回転しながらまいていく。上からのダウンウォッシュの勢いで、白いマルチが舞い上がった。
 同社マーケットディベロップメント部の小寺敦部長は、「4月からこの研究センターの試験場で練習を兼ねてドローンを飛ばし、約5か月で素人でもある程度操縦できるようになった」と説明。
 農薬散布ドローンの実物を初めて見た生産者からは「案外、大きいな」という声が聞かれた。また、西宇和の26歳の生産者は、「思ったよりサーッとまいて農薬があまりいらんのやなと思った。今は、スプリンクラーで自動散布できるので手掛けしているところにあったらいい。スプリンクラーを老朽化で買い替えるタイミングに合えば考えられる」と感想を話していた。

かんきつ防除ドローン04かんきつ防除ドローン05

DJIの自動航行ドローン「AGRAS MG-1」


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