農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第6回 病害の防除方法 (つづき)2019年5月31日
1.前回のおさらい
前回、防除方法には、化学的防除、物理的防除、生物的防除、耕種的防除の4種類があることを紹介した。まずは化学的防除の主体である殺菌剤とは何か、殺菌剤を選ぶ際に考慮すべきこととして、(1)農薬登録の確認(2)どんな病害に効果があるか
(3)使用方法の確認、(4)収穫前使用日数の確認
(5)予防効果なのか治療効果なのかの確認
(6)薬害の有無の確認
の6項目について解説した。
2.殺菌剤を選ぶ際に考慮すべきこと(つづき)
(7)耐雨性の確認
農薬は作物に散布されると、作物表面に拡散して覆い、あるいは作物体内に浸透して効果を発揮する。そのため、散布された後、いかにしっかりと作物表面に有効成分が付着できているかが効果の鍵となる。
散布付着後に雨が降ると、せっかく作物の表面を覆っている農薬が洗い流されてしまう。この洗い流されることに耐える性能のことを耐雨性と呼んでいる。
特に、カンキツ黒点病の防除ではこの性能の優劣が殺菌剤選びの鍵となることも多い。同病が雨媒伝染する病害のため、雨の多い季節には一定の雨量を経過すると追加散布が必要になる。
(8)有効成分の薬剤系統の確認
農薬が効果を発揮する元となるものを有効成分という。殺菌剤の有効成分には実に沢山のものがあって、有効成分ごとに効果のある病原が異なる。このため、どの有効成分がどの病害に効果があるかを覚えていくのは、骨の折れることではあるが、地道に現場対応している間にどんどん知識が溜まっていくものだ。なので、積極的に知識を増やしてもらいたい。
また、やっかいなことに農薬には商品名と有効成分名の違う名前があるので、どちらも覚えるようにしてほしい。これも覚えるのは大変だが、指導業務に携わると必ず必要になるし、役に立つので、是非とも商品名と有効成分はセットで覚えるようにしてほしい。
(9)耐性菌発生の確認
いい殺菌剤が登場し、よく効くからとで喜んで何回も使っていくうちにだんだんと効かなくなり、最後には散布しても全く効かなくなるということがしばしばある。その現象の原因は、耐性菌が発生したためであることが多い。
耐性菌とは文字通り、殺菌剤に耐性を持つ菌であり、殺菌剤が効かない菌のことをいう。耐性菌が発生する理由は、一般的に、もともと自然界にはある殺菌剤に耐性を示す菌が極少数存在しており、それが生き残り増殖し、ついに病害を発生させるまで菌が増殖してしまって起こるというのが定説だ。
近年登場してきた、「○○病に特異的によく効く」というような殺菌剤に発生事例が多いので、このような殺菌剤を使用する前には耐性菌の発生の有無を確認しておくようにした方がよい。
ところで、この耐性菌は、有効成分の化学構造が似ている複数の殺菌剤があったとすると、有効成分が違っていても複数の殺菌剤に同様に効かないことがある。これを交差耐性といい、有効成分の構造が似ている同じ薬剤系列であればこの現象が起こりやすい。
そのため、耐性菌対策を考える際には、農薬の有効成分に関する知識が必要になるし、指導する場合も、異なる薬剤系列を輪番で使う方法が一般的だ。
この薬剤系列を覚えるのも大変だが、最近はFRACコードと呼ばれる、示されたコードが別であれば薬剤系列が異なることを示した表が作られ、農薬工業会から農薬商品名入りで公表されているので、定期的に取り寄せて知識を入れるようにしてほしい。
最新のFRACコードは以下の表に示すが、農薬工業会のHPでも入手できるので定期的に確認してほしい。
農薬情報局(農薬工業会)
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