農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第8回 病害の防除方法(生物的防除)2019年6月14日
1.前回のおさらい
前回までに、化学的防除、物理的防除について紹介した。今回は、減農薬栽培や有機栽培で使われる注目度の高い防除法である生物的防除について紹介する。
2.生物的防除とは
生物的防除とは、文字通り生物の力を借りて防除する方法だ。現在、生物的防除で使われる生物とは、細菌や糸状菌などの微生物が主なもので、それを使いやすいように製剤化したものを生物農薬という。
生物農薬は、病原菌の生活圏や栄養を奪ったり、直接病原菌に取り付いて死滅させたりして防除効果を発揮する。このため、防除効果を発揮する微生物が生活しやすい環境をいかに整えてやれるかが生物農薬の効果を左右する。そこを理解せずに、普通の農薬と同じように扱うと失敗するケースもあるので注意が必要だ。
また、生物農薬は有効成分が自然界にいる微生物であるため、農薬の使用回数にはカウントされないという特長がある。これは、減農薬栽培や有機栽培に取り組む生産者にとってはありがたい。特に防除回数が増える果菜類などでは、この生物農薬を使うことで、化学農薬の防除回数を減らし、効率的な防除を組み立てることが可能となる。
今のところ、生物農薬の数が少なく、防除体系に組み入れられる作物は少ないが、野菜類など導入が可能な作物についてはぜひ組み入れてみてほしい。
その際の生物農薬選定の参考となるよう、別表に現在の生物農薬(殺菌剤)一覧を整理した。
3.生物的防除の実際
生物農薬が効果を発揮するメカニズムは、有効成分となる微生物によって異なる。このメカニズムを知ることは、上手な使い方に直結するので、以下有効成分ごとに整理してみた。
(1)バチルス剤(別表の農薬種類名にバチルスと書かれているもの)
納豆菌と同類の細菌を有効成分とする生物農薬。作物体上に長期間定着させることができ、灰色かび病やうどんこ病など多くの病害に効果を示す。
病原菌より先に植物体上に定着させることで、病原菌の住処や栄養を奪い、病原菌が定着・増殖しにくくして防除効果を発揮する。このため、病害の発病前がごく初期の時期を逃さず、あくまで目安だが、7日~10日間隔で2~3回散布することで効果が安定するようだ。
バチルス菌は化学農薬の影響を受けにくいため、もし病害が発生した場合でも化学農薬との併用ができるため、病害の蔓延を防ぐことができる。化学農薬との組み合わせの方法等は農薬ラベルの注意事項や技術資料を参考にするとよい。
稲の種子消毒に使われる製品もあるが、基本的な効果が出るメカニズムは同じだ。
また、バチルス剤には、バチルス菌と無機銅との混合製剤(商品名:クリーンカップ、ケミヘル)がある。一見、無機銅がバチルス菌に効いてしまいそうだが、この組み合わせは意外にも相性がよい。バチルス菌のよいところと、銅のよい所が合わさり、単独で使うよりもより多くの病害に安定した効果を発揮する。
無機銅自体、農薬の使用回数をカウントされない天然由来の有効成分であるため、使用回数制限にかかることはなく、散布回数を気にせずに使える生物農薬だ。
(2)細菌剤
細菌(バクテリア)を主成分とする生物農薬だ。非病原性エルビニア剤や、シュードモナス剤が主なものである。このうち、非病原性エルビニア剤は、軟腐病菌であるエルビニア カロトボーラの非病原性(作物に定着はするが病害を起こさない)菌を見つけ出して製剤化したもので、これをあらかじめ作物に散布しておくことで、病原菌が作物に定着できず、発病を抑えることができる。
その他の菌も、有効成分の細菌が病害よりも先に作物体上に定着する必要があるため、発病前の散布が鉄則だ。
一方、バリオボラックス パラドクス水和剤は、アブラナ科野菜の大敵である根こぶ病菌に特に作用して効果を表す生物農薬。セルトレイへの灌注で効果があるので使いやすい。
(3)糸状菌剤
有効成分が糸状菌のもので、タラロマイセス剤、トリコデルマ剤、コニオチリウム剤がある。これらは、いずれも糸状菌の胞子を製剤化したもので、処理された後に発芽して菌糸を伸ばし、病原菌の定着場所を奪う。または、病原菌の菌糸に絡みついて生育を阻害したりして効果を表す。そのため、この糸状菌剤も他の生物農薬と同様に、病害が発生する前に散布して、病原菌より先に生育・定着をさせないと効果が出ない。ラベルの使用方法を確実に守って使うようにしたい。
一方、コニオチリウム剤は、土壌に均一に散布してしっかりと混和するという他の生物農薬とは異なった使い方をする。その理由は、この剤が菌核病の菌核に作用するユニークな生物農薬であり、土壌に潜む菌核に確実に付着するようにする必要があるからだ。
(4)ウイルス剤
ズッキーニ黄斑モザイクウイルス弱毒株水溶剤は、現在登録のある生物農薬で唯一のウイルス病防除剤だ。ズッキーニの黄斑モザイク症の原因ウイルスであるズッキーニ黄斑モザイクウイルスの弱毒ウイルスを製剤化したものである。
これは、人間のワクチンと同様、あらかじめ病原性が低いウイルスに作物を感染させることによって抗体をつくり、病原性の強いウイルスが来ても発病しなくなることを狙ったものだ。
使い方も人間の予防接種と同様で、弱毒ウイルス製剤希釈液をカーボランダムと呼ばれる粒子などとともにガーゼに含ませ、作物に傷が付くぐらいこすり付けて、作物体内に弱毒ウイルスを接種する。
以上、生物農薬の概略を示したが、生物農薬はいずれも化学農薬とは取り扱いが異なるので、使う前によく説明書を読むか、メーカーの担当者に聞くなりして正しい使い方をするよう指導する必要がある。
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