世界のGM作物栽培面積は1億8510万haに バイテク情報普及会2017年6月1日
バイテク情報普及会は、5月30日に都内で、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)のシニアプログラムオフィサーであるローランド・ロメロ・アルデミタ博士と日本バイオテクノロジー情報センター代表の冨田房男氏を講師に、ISAAAが発表した「遺伝子組換え作物の2016年商業栽培実績に関する年次報告書」を中心とするセミナーを開催した。
アルデミタ博士は、この年次報告書によれば、遺伝子組換え(GM)作物の2016年の栽培面積は、1996年の170万haの110倍、1億8510万haとなり、前年よりも3%増加した。
栽培面積上位5か国は「開発途上国」のブラジル4910万ha、アルゼンチン2380万ha、インド1080万haと「先進工業国」である米国7290万ha、カナダ1160万haで、この5か国で全世界のGM作物栽培面積の91%を占めている。この5か国に次いで多いのが、パラグアイ360万ha、パキスタン290万ha、中国280万ha、南アフリカ270万ha、ウルグアイ130万haとなっている。
主要な作物別にみたGM作物の導入率(面積)は、大豆が全世界の栽培面積1億1700万haの78%、ワタが同3500万haの64%、トウモロコシが同1億8500万haの26%、ナタネが同3600万haの24%だという。また、これらの作物についてGM栽培率が90%以上あるは90%に近い国は、GM大豆とGMトウモロコシでは、いずれも米国、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、南アフリカ、ウルグアイとなっている。GMワタでは、米国、アルゼンチン、インド、中国、パキスタン、南アフリカ、メキシコ、オーストラリア、ミャンマー。GMナタネ(キャノーラー)は米国とカナダとなっている。
また2016年には、米国とカナダでジャガイモの販売が承認されている。それぞれ別の形質だが、いずれもアスパラギンのレベルが低いので高熱処理中に生成するアクリルアミドも低いレベルという。また、米国で承認されている切り口が変色しないリンゴ(ArcticApples)が初めて市販可能な量が収穫され、冬期間貯蔵した後、今年に米国の食料品店で販売されるという。このほか、ブラジルで、除草剤耐性大豆とウイルス抵抗性インゲン豆が承認され、今年から栽培が予定されている。
今後の見通しとして「作物による栽培面積がさらに拡大する可能性が高い」とし、GMトウモロコシは「少なくとも1億ha」増加する可能性があり、具体的にはアジアで6000万ha、中国単独で3500ha、アフリカ諸国で最大3500万ha増加するとみている。
また、中国で2020年にはGMジャガイモの栽培面積が560万~700万haになる可能性があるとみている。そしてBtワタを10万ha以上栽培する国がアフリカで10か国まで拡大すると予測している。
そして今後の技術の可能性として、「重要な形質をコードしている作物自身の遺伝子を編集し、非組換え体を作成することが可能になる」とみている。この技術(ゲノム技術)は、従来の育種やGM技術に比べて、精度・規制・スピード・費用面で有利であり、すでにゲノム編集が行われている作物として、大豆、トウモロコシ、小麦、稲、ジャガイモ、トマト、落花生をあげている。
冨田房男氏は、日本農学アカデミーの「遺伝子組換え作物の実証栽培に関する提言」(今年3月1日:既報)を紹介するとともに、北海道の重要な輪作作物であるテンサイ(ビート)栽培でのGMビートの有用性を詳しく説明。また、日本は大豆、トウモロコシはほとんど輸入に頼り「その7割は、遺伝子組換え作物で、年間約1600万t輸入している」が「もしもGM作物の輸入が止まると国産の動植物油脂や、鶏肉、鶏卵の価格は約2倍になる」という読売新聞の「論点」(3月1日朝刊)し、いまやGM作物が日本の食生活で大きな役割を果たしていることを強調した。
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