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平成12年緊急総合米対策について
本紙調査 全国47都道府県JA米政策アンケートまとまる
 本紙が昨年12月に行った米政策についてのアンケート調査の結果が発表された。今回は「平成12年緊急総合米対策」の評価を主な主題にした調査である。
 この調査は、全国のJAから202のJAを無作為に抽出して調査対象にしたもので、そのうち164のJAから回答を得た。回答率は81.2%で、きわめて高かった。 この緊急対策が発表されてから調査時点までに、自主流通米の入札が3回行われた。その結果をみると、米価の急落は抑えられたものの、米価回復までには到っていない。
 こうした状況の中で、生産現場のJAは米政策について、なにを思っているのだろうか。調査結果から探ってみよう。


調査結果

この緊急対策についてご意見をお聞かせ下さい(自由回答)

調査項目、調査方法


米価回復への道程  立正大学教授  森島 賢

◆多くのJAが緊急米対策を高く評価

 調査結果をみると、多くのJAは、こんどの緊急対策を高く評価している。
 ことに在庫米の一部を飼料用、海外援助用および加工用で処理することについての評価は「良い」とするものと「やむを得ない」とするものを合計すると79ないし87%に達している。
 また、転作助成金の一部増額、稲作経営安定対策の特別支払い、および政府米の買い入れについての評価も高い。すなわち「良い」と「やむを得ない」の合計は70ないし86%にまで達している。
 これらは、JAを中心にした、ねばり強い要請活動の成果である。

 しかしながら、減反強化についてみると52%が「やむを得ない」と評価している一方で、30%が「良くない」としている。輸入量の削減ではなく、減反強化による需給の改善を納得していないのだろう。
 また、需給調整水田の新設については52%が「良くない」と評価している。これは、制度の詳細が明らかになっていないので、青刈りしたばあいに、稲作所得が確保されるかどうか、についての不信感があるからだろう。

 今後の米政策についての要望をみると、輸入に関連した項目で「減反しているときは輸入しない」(50%)と「輸入米の責任ある処理」(56%)の要望が上位を占めている。
 また「転作作物への助成強化」(56%)と「計画流通に対する助成強化」(45%)を要望するものも多い。

◆消極的な評価の理由は輸入米の処理

 以上の調査結果は何を物語っているのだろうか。
 現場のJAは、緊急対策のなかの在庫米処理を高く評価している、とはいっても、それは積極的な評価ではなく、「やむを得ない」という消極的な評価である。ことに飼料用の処理は80%、加工用の処理は71%が「やむを得ない」とする消極的な評価で、「良い」とする積極的な評価は7%と9%にすぎない。
 消極的にしか評価しない理由の一つは、処理のためのコスト、つまり売買差損の多くを生産者が負担することにあるだろう。在庫米を圧縮し、米価を回復して、米の再生産を制度として保証することは、政府の責任ではないのか、だから、差損はすべて政府が負担すべきではないか、という強烈な主張である。

 消極的にしか評価しないもう一つの理由は、在庫米が、ここまで膨れ上がった後で、その処理を考えるのではなく、その前に在庫米が膨れ上がらないような方策を、何故考えなかったのか、という批判である。在庫米を大量に抱えこむようになった主な原因である輸入米を何故これまで放置してきたのか、という痛烈な批判である。
 このことが、今年の減反強化に対する30%の反対の理由でもあるだろう。減反強化によって需給を改善するのではなく、輸入量のゼロを目指した削減による需給の改善を求めているのである。

◆減反時の輸入中止を明示して過当競争を回避し協調販売を

 この調査から明らかになった米価回復の道筋は次の通りである。すなわち、米価回復のためには、いまの全く不十分な備蓄政策のもとでは、在庫量を減らすしかない。そのためには、減反を着実に実行するしかない。
 そのためには「減反しているときには輸入しない」という方向へ向かうことを明確に示して、減反の大義名分を確立することである。そして、それを確立するまでの期間は政府が「輸入米の責任ある処理」を行うべきである。
 この前提のもとで、減反を着実に実行するためには「転作作物への助成強化」が必要である。
 このようにすれば、在庫米が過剰になることはない。米価回復の条件が満たされる。その上で、過当競争を回避して秩序ある協調販売をすれば米価回復が実現するだろう。
 協調販売は協同組合運動の原点である。そのためにはJA自身の取り組みを強化するだけでなく、政府の助成、つまり「計画流通に対する助成強化」は必要不可欠である。

 以上のような道筋で米価を回復させることを、生産現場のJAは要求している。
 これは「国際競争に立ち向かう」という考えや「作る自由」「売る自由」という農政思想を拒否し、それと鋭く対峙するものである。




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