計画流通米の確保が最大の課題
JAグループの取り組み
稲作経営の安定のために、政府は昨年米の緊急需給対策を打ち出し、またJAグルー プも整然とした販売に取り組むなどの対策をとってきた。ここではJAグループの11年
産米の販売への取り組みなどを振り返り、今後の課題を探ってみる。
検証・最近の米情勢 (1)
マージン確保 VS 消費者の低価格志向 ジレンマに陥るコメ卸業界
◆11年度米不落札率の高いスタート
11年産米の作況が豊作基調となった昨年9月、新米の本格的な入札を前に主食用の生産オーバー分17万トンを飼料用に処理するなどの措置を盛り込んだ「米の緊急需給対策」を農水省は決定した。
一定量をあらかじめ隔離すると市場に向けてアピールしたが、9月入札の平均指標価格は前年より60キロあたり2000円も安い1万7131円となった。しかも生産者サイドにとってショックだったのは、不落札比率が40%以上にもなったことだった。
10月の入札でもさらに価格は下がり、不落札比率は25%に。11月の入札から不落札比率は6%と一挙に解消はしたものの、平均指標価格はついに1万7000円を割り込んだ。
こうした動向について、JAグループでは、豊作基調になったことに加え、消費者の低価格志向、卸売業者の在庫増、計画外流通米の早期の出回りなどが原因と分析している。卸売業者の在庫増は、10月末に未引き取りとなっていた自主米18万トンがJA全農から一括所有移転されたため。契約どおりの手続きなのだが、前年同期より12万トンも多い46万トンに在庫が膨れ上がった。そのために卸業者は新米の手当てよりも在庫の消化を優先させた。
計画外流通米の出荷量は、出回り初期の9月には前年に比べて11万トン増加したと食糧庁は分析している。これは豊作基調が伝えられたことや、1等米比率が過去20年間で最低の63%となるなど品質評価が低いこともあって、産地での売り急ぎがあったためと考えられている。
計画外流通米の推定出荷量は、8年産以降270〜280万トン程度で推移してきたが、11年産では286万トン程度になったと見込まれている。生産量に対する割合は31%になると推定されている。
計画外流通米の推定出荷量の推移 |
(単位:千トン、%) |
年産 |
生産量
@ |
計画出荷量
A |
農家消費等
B=@ - A |
うち一般米相当の計画外流通米
(農家消費、くず米等を除いたもの) |
生産量に
対する割合(%) |
7 |
1,075 |
631 |
444 |
258 |
24 |
8 |
1,034 |
577 |
457 |
277 |
27 |
9 |
1,003 |
553 |
450 |
280 |
28 |
10 |
896 |
465 |
431 |
268 |
30 |
11(見込) |
918 |
472 |
446 |
286 |
31 |
資料:食糧庁 「生産者の米穀現在高等調査結果」 等
◆3月以降販売量、消費量が増加傾向に
一方、政府米の販売については、「新たな米政策」で自主流通米との「協調販売」を原則とするが確認された。国が在庫削減のために政府米の販売をすすめれば自主米の販売環境が悪化することから、この方法は「市場の安定化を図る上で極めて重要である」とJAグループは評価。
そのうえに立って、昨年9月に決まった緊急需給対策では、8年産米30万トンの販売凍結という措置を決めた。当初、販売環境が好転すれば販売は再開されるとされたが、4月18日に、12米穀年度中(今年10月末まで)は、この措置を継続することと販売価格の改定は行わないことを決めている。 政府米の産地別販売残状況
また、11年産の生産オーバー分の別途処理策も具体的にすすみ、JAグループは3月末までに政府の売り渡しを完了。その代わりに政府から買い受けた7年産米について4月から配合飼料原料として工場に販売を始めており、来年3月までに完了する予定となっている。
このような措置で11年産自主米の需給改善を図ってきたが、ようやく3月から変化の兆しが見え始めてきた。
入札価格は相変わらず低水準だが、販売量は伸び出した。
2月までの販売量は、134万トンと前年同期の159万トンにくらべて24万トンも減少し、価格低迷とあわせ期末の繰り越し在庫増の不安も募った。在庫量が増えれば産地によっては13年産の生産調整面積にも影響しかねないだけに深刻な問題だったが、3月には33万トンと前年の21万トンを大きく上回った。
これは出回りの早かった計画外流通米がほぼ姿を消し、自主流通米の需要が高まったためだ。また、46万トンの在庫を抱えた卸業者も5月末には28万トンまでに圧縮されたことも影響した。
4月の販売量も31万トン(前年27万トン)、5月は31万トン(前年23万トン)と好調で、3〜5月では前年実績を25万トン上回っている。この結果、6月以降の要販売量は134万トンと前年の143万トンより9万トン少なくなっている。
12米穀年度の自主流通米の販売状況 |
(単位:万トン) |
|
販売計画
@ |
販売実績 |
6月以降
要販売数量
D=@ - C |
7〜2月
A |
3〜5月 |
5月末累計
C=A+B |
3月 |
4月 |
5月 |
計B |
11年産
|
364 |
134 |
33 |
31 |
31 |
96 |
230 |
134 |
10年産 |
373 |
159 |
21 |
27 |
23 |
71 |
230 |
143 |
対前年差
|
▲ 9 |
▲24 |
12 |
5 |
8 |
25 |
0 |
▲ 9 |
資料:食糧庁 注:ラウンドの関係で内訳と合計や差が一致しない場合がある。
さらにJA全農では、卸業界の動向として、出来秋以降、消費者の低価格志向などをにらみ仕入れリスクを回避するために、当用買いが中心だったが、最近では量販店への年間需要を見越した数量確保の動きもあることから、5月29日は事前年間取引を行った。
その結果、37万トンの提示数量に対し75%の28万トンが成約するなどここ最近の需要増を裏付けることになった。
また、4月の1人1か月当たりの米消費量は前年同期比0.4プラスと49か月ぶりに増加に転じ、今後の動向が注目されるデータもでてきた。
平成11年産事前年間取引の概要 |
(単位:千トン、%) |
|
提示数量 |
成約数量 |
成約率 |
第1回(8月) |
864 |
766 |
88.6 |
第2回(5月) |
371 |
277 |
74.9 |
◆集荷数量を拡大し計画外米抑える
ただし、6月の入札結果では、落札残が拡大するなど価格回復はもちろん、需要回復傾向についても楽観視できない状況は続いている。
では、JAグループとして今後はどのような対応が求められるのか。
6月19日に開かれた「米の需給・価格情報に関する委員会」で配布された資料には「11年産米の教訓」との項目をもうけ、次のような点を強調している。
11年産の生産量は918万トンだったが、計画出荷米の集荷量は472万トンで51.4%にとどまった。その一方、計画外流通米が出来秋から年明けにかけて流通し、今年2月まで販売業者は計画外流通米を中心に仕入れを行った。そのために緊急需給対策を決めたにもかかわらず米価は低迷−−。
こうしたことから需給と価格の安定、さらに生産者の手取り確保のためには「JAグループが集荷数量を拡大して計画外流通米の流通を抑えることがいかに重要であるか思い知らされた年となった」。
こうした認識のもと、12年産の計画出荷積み上げ運動として、契約数量の完全な集荷と、同時に生産者のニーズもふまえて、計画外出荷米の扱いもJAグループの事業のなかに取り込んでいくなど、計画流通米の確保が最大の課題であると位置づける。同資料では「JAグループ以外の計画外流通米の跋扈を許さず、自主流通米の需要を最大限確保していく」と呼びかけている。稲作経営の安定を図るには、JAグループの力しかないという認識が求められている。
平成11年産期別相対取引の概要 |
(単位:千トン、%) |
|
提示数量 |
成約数量 |
成約率 |
第1回(1月流通分) |
80 |
42 |
52.8 |
第2回(2月流通分) |
90 |
37 |
41.6 |
第3回(3月流通分) |
113 |
65 |
57.7 |
第4回(4月流通分) |
146 |
78 |
53.4 |
第5回(5月流通分) |
126 |
90 |
71.8 |
第6回(6月流通分) |
163 |
75 |
46.0 |
平成11年産自主流通米の主要銘柄の販売状況(5月末現在) |
(単位:千トン、%) |
産地銘柄 |
集荷数量 |
販売数量 |
販売比率 |
北海道きらら397 |
198.7 |
122.3 |
61.6 |
青森むつほまれ |
92.2 |
71.3 |
77.3 |
宮城ひとめぼれ |
186.7 |
115.3 |
61.8 |
新潟コシヒカリ(一般) |
206.2 |
108.4 |
52.6 |
富山コシヒカリ |
120.9 |
73.8 |
61.0 |
検証・最近の米情勢 (1) マージン確保
VS 消費者の低価格志向 ジレンマに陥るコメ卸業界
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