農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大名誉教授)は8月30日、愛知県のJAひまわりで第8回シンポジウムを開いた。テーマは「農協の地域づくり活動」。第24回JA全国大会では「安心して暮らせる豊かな地域社会の実現と地域貢献」を決議したが、JAにとって農業振興とともに地域づくりも大きな課題となっている。シンポジウムでは地域貢献を「JAの存在意義を高めるために地域社会を構成するさまざまな要素と継続的に関わっていく取り組み」と位置づけているJAひまわりの実践報告を中心に、地域協同組合の視点から今日的な農協の役割について活発に議論した。
司会は北出俊昭・前明治大学教授。
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地域住民との連携は農政の転換にもつながる
◆農業振興と地域貢献
シンポジウムには青森、新潟などからの参加者のほか、JAひまわりの組合員・役職員など合わせて約180人が参加した。
報告で藤谷築次(社)農業開発研修センター会長理事が、「本物の農協運動」を展開しているJAと「単なる事業体」となっているJAに2極分化しJA間格差が拡大していると指摘、その要因として自主的ではなく外から要請された「他律的」な改革に多くのJAが振り回されてきたからではないかと厳しく提起した。
こうした見方について参加者を交えたディスカッションでは、JAの経営には多くの問題があったことも事実で「他律的というが改革に取り組まざるを得なかった面も。しかし、赤字は縮減したが利用も縮小という悩みも抱えている」などの意見が出た。藤谷氏は現場の実情は分かるとしながらも「どこまでJAとして悩み、組合員の思いをしっかりつかむなかで問題提起をしたかが重要。妙手はないがどれだけ手順をふみ議論したかが、今後も問われる」と指摘した。
また、JAの役割について「地域農業振興」と「地域づくり」がどうリンクするのか、「生産者が年々減少しているなかでJAの地域貢献が本来の地域農業活性化につながるか」との生産者からの質問もあった。これに対して藤谷氏は「地域の基盤産業としての農業が活性化しなければ地域づくりはできないのはその通り。しかし、一方で農業内部だけでは農業振興ができない事態に直面している」として、自給率向上への期待が高まっている今、「地域の他産業、住民と連携して現場から声を上げていく。それを各地で展開していけば国民世論を変える」と強調、JAの地域貢献活動はこれまでの農政運動の転換をも視野にいれた活動と捉えるべきと指摘した。
◆役職員一丸となって
JAひまわりの柴田勝組合長には多彩な地域貢献活動を展開するJAの体制づくりについての質問が寄せられた。
柴田組合長は「職員と同じ目線で語り合いながら」、JAの地域貢献活動の重要性を浸透させたきたと話し、具体的には総代会の下にある119名の運営委員会や、生産部会長などとの定期的な意見交換が活動の基盤になっていること、JA若手職員による地域貢献委員会を立ち上げたことなどを紹介した。また、剰余金の処分でも地域貢献活動基金への積み立てが総代会で了承されているという。
「農業を取り巻く環境は原油高などをはじめとして生産コスト増大で大変厳しくJAとしての支援策も検討中。農協は組合員の営農と生活の拠点、が原点。10年先、20年先に元気なJAでいられるかとしばしば問われるが、こういうときだからこそ役職員が一丸となって創意工夫して事業を進める必要がある。地域貢献をしながら、組合員拡大、事業拡大をし組合員のため地域にねざした農協でありたい」と語った。
生産コスト上昇など厳しい状況にあるなか、一方で自給率の向上など国内農業政策への期待が高まっている。こうしたなかで行われた今回の議論ではJAの地域貢献活動は日本農業への国民理解、合意を作り出すためにも必要だとの視点が提起された。司会の北出俊昭元明治大学教授は「政策転換するためにも組織の行動が大事」と指摘したほか、梶井会長はJAの事業への理解を深めてもらうためにも「組合員による協同運動を盛んにすること、との提起をしっかり受け止めるべき」と強調した。
(梶井功東京農工大学名誉教授、柴田勝・JAひまわり代表理事組合長、藤谷築次(社)農業開発研修センター会長理事の報告へ)