バイエルの結城中央研究所は1985年に建設された。試験ほ場1万9000平方mを含む2万9000平方mの広大な敷地面積があり、同社の日本における農薬等の研究開発拠点として、これまで水稲用除草剤「AVH-301」、「イノーバ」、殺菌剤「アドマイヤー」などの主力製品を開発してきた。しかし、ドイツ本社が世界的に研究開発部門の再編を決めたことに伴い、2011年2月に同年内での閉鎖が決まっていた。
アグロ カネショウは東京電力の福島第一原発から半径1kmほどの距離に工場を持つ。「カネマイト」、「バスアミド」などの主力製品を生産し、同社の売上の43%を担う主力工場だったが、原発事故により立ち入り禁止区域に指定され、操業停止が続いている。
今回の売却は、日本国内での研究開発の継続を望んでいたバイエルと、福島工場に代わる新たな拠点施設の設立をめざすアグロ カネショウとの双方に有益だとして昨年10月、合意に達した。
施設はすべてアグロ カネショウが買い取り、「アグロ カネショウ株式会社 結城事業所」と改称する。バイエルは研究棟の一部を賃借し「バイエル クロップサイエンス株式会社 開発センター」として製品開発などの業務を継続する。
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看板を除幕し握手する櫛引社長(左)とマーチャント社長。
◆「今日から復興の第一歩」櫛引社長
この日の開所式でアグロ カネショウの櫛引博敬代表取締役社長は、「今日、ようやく震災からの復興の第一歩を踏み出した」と述べ、「生物研究の拡充なども含めて、さらに飛躍するきっかけにしたい」と結城事業所への期待を語った。
同所は施設の一部を取り壊し、現在、国内のほかの工場や韓国で臨時に生産している「カネマイト」、「バスアミド」を主に生産する工場を新設する。早ければ年内には操業を開始する予定。
また、同所は試験ほ場として1haほどの水田があるが、アグロ カネショウは水稲の製剤を持たず今後の開発予定もないため、「水田は子どもたちの体験農業の場などとして開放し、教育の場として役立てたい」(櫛引社長)考えだ。
バイエルのギャビン・マーチャント社長は、「日本での研究開発が継続でき、また研究スタッフも引き続き仕事ができることになり大変嬉しい」と述べ、今後の両社の研究開発の発展に期待を寄せた。
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現在の結城事業所
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