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【(株)エス・ディー・エス バイオテック】
ダコニール、ベンゾビシクロン軸に 世界の食料供給に貢献  SDS・安田社長

 (株)エス・ディー・エス バイオテック(SDS)は23年6月、TOBにより出光興産のグループ企業となった。安田誠・SDS代表取締役社長に、グローバル企業の一員としての新たな経営方針と戦略を聞いた。2月1日に発表された平成23年12月期決算とあわせて紹介する。

◆技術活かして新規市場にも参入

安田誠・SDS代表取締役社長 安田社長は新たな基本方針について、「これまでは農薬ビジネスに特化してきたが、出光興産グループというグローバル企業の一員となったことで、農業全体における作物保護の役割を担い世界の食料供給に貢献する企業として、視野を拡げた活動をしたい」と考えている。
 戦略の核としては、同社の基幹剤である殺菌剤「ダコニール」と水稲除草剤「ベンゾビシクロン」で安定的な収益を図る。
 ダコニールは幅広い病害に効き、耐性菌が出にくいことなどから近年フィリピンで大きく売り上げを伸ばしており、「徹底的なコストダウンにより、ジェネリック品との競争力を高め、潜在性、成長性のあるほかのアジア市場へも積極的に展開していきたい」と意気込む。
 ベンゾビシクロンは昨年、韓国で過去最高の売り上げを達成したほか、今後は米国での登録・販売を控え、中国でも委託試験が始まる予定だ。国内でも「他社新規剤との混合剤が開発中で、水稲の生産性向上に貢献する」としている。
ダコニール1000 出光興産とはすでに研究開発で業務提携を始めており、出光のバイオ研究チームがSDSのつくば研究所に合流し、共同研究体制をスタートさせた。そこでは、新たな生物殺菌剤、芝用除草剤などの開発が進められている。
 また新規市場の開拓では、「当社の持つ技術を活かして、家庭園芸市場への参入をめざす」として、家庭園芸向けスプレーボトルの開発などを進めるとともに、「家庭園芸救急箱」という通販ウェブサイトを昨年11月に開設した。


◆殺菌剤伸びたが、円高、震災の影響で減益

 23年12月期決算は、売上高が111億8000万円で前年比2億4800万円(2.2%)減と微減だったが、利益面は想定外の円高や震災の影響などで減益。営業利益は8億4600万円で同5億2100万円(38.1%)減、経常利益は7億4200万円で同4億7100万円(38.8%)減、当期純利益は4億7900万円で同3億1600万円(39.7%)減だった。1株あたり当期純利益は61.45円で同40.54円減だが、1株あたり配当金は20円を維持した。
 農薬の品目別売上では、同社の基幹剤である「ダコニール」を含む殺菌剤が同1.9%増の46億円だったほか、緑化関連剤が同4.3%増で16億円とのびた。
 一方、水稲除草剤は各社が新規剤を投入し競争が激化したことなどから同3.7%減の40億円だった。同社の主力製剤であるベンゾビシクロンは製剤登録数を64と増やしたものの、推定使用面積は46万haほどでやや減った。殺虫剤は6億円で同28.8%減だった。これはセンチュウ防除剤の「DC油剤」が23年4月1日に劇物指定された影響だが、「落ち込みは一時的なものであり、24年の売り上げは回復する」(安田社長)見込みだ。
 海外での売上高はアジアが同15%増えて30億5200万円となり、合計44億5800万円。全売上高に占める輸出割合は4割になった。
 24年12月期の業績計画は、売上高105億円、営業利益9億1000万円、経常利益8億4000万円、当期純利益5億円。


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