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総選挙へ 各党マニフェストの農業政策

自民党 50%めざし、考えられるすべての対策を
公明党 稲作のセーフティネットを充実
民主党 戸別所得補償で農村を再生する
共産党 不足払い制度で1俵1万8000円を
社民党 60%目標に直接支払い制度を導入

 総選挙は8月18日公示、30日投開票で実施される。各党のマニフェストも出そろった。世界的な景気後退のなか、新しい時代の経済社会をどう構想するかが問われるが、鍵になるのは食料、農業政策であり、地域政策だともいえるだろう。各政党ともにかつてなく農業政策を重視、あるいは全面に出している。

 総選挙は8月18日公示、30日投開票で実施される。各党のマニフェストも出そろった。世界的な景気後退のなか、新しい時代の経済社会をどう構想するかが問われるが、鍵になるのは食料、農業政策であり、地域政策だともいえるだろう。各政党ともにかつてなく農業政策を重視、あるいは全面に出している。
 いずれも食料自給率を50〜60%に引き上げることを柱にし、そのための具体策を掲げている。政策の手法、重点項目の違いから何が見えてくるか。若者が魅力を感じ、未来に自信を持って貴重な食料生産資源を引き継げるのかどうか。じっくりと考え選択するチャンスが訪れた。

 (【特集】主要5政党の食料・農業・農村政策を聞くはコチラから)
  

◆主要5党の農政公約(8月10日現在)


自民党 自民党 (政策BANKより要旨)
◆国内農業生産を強化し農家所得を増大
食料自給率50%をめざし、考えられるすべての対策を講じる。所得最大化を実現、農山漁村活性化政策を実施。施策はすべての意欲ある農家を支援対象とし面積・年齢要件は撤廃。永続的に毎年必要な予算を確保。
◆農地をフル活用
耕作放棄地、不作付地を解消。二毛作へ思い切った支援。農地を安心して貸すための支援、経営拡大したい人へ支援を充実、相続税対策、地域の希望に沿った農村公共事業。
◆国民の求める農産物の安定供給
米粉、飼料用米等「水田としての利用」をしながら生産調整にもなる取り組みで十分な所得をあげられるよう重点的な支援を拡大する。米の生産調整は不公平感などの改善を図りつつ豊作などによる価格下落があっても経営に影響をおよぼさないよう措置。
◆農山漁村の保全と発展可能性の実現
中山間地域直接支払い制度、農地・水・環境対策については新たな観点も入れて充実強化。鳥獣害対策、バイオ燃料、太陽光発電等支援。

公明党 公明党 (マニフェスト09 生活を守り抜くから要旨)
◆緑の産業革命?魅力ある農林水産業・農山漁村づくり
(食料自給率50%)2015年度までに自給率50%(金額ベース80%)めざす。水田フル活用に向け対策大幅強化。飼料米、エコフィードなど自給飼料の利用拡大。食料安保に関する国の基本方針策定(食の安全・安心を確保)化学肥料、農薬使用抑制のため土壌診断など推進。家畜伝染病対策。加工食品の原産地表示、食品トレーサビリティ。(活力あふれる農業に再生)米作の収入減少影響緩和対策での標準的収入の算定を見直しセーフティネットを充実。生産目標の都道府県間調整で適地適作を進める。肥料・農薬・家畜ふん尿による土壌や水質など環境への負荷を抑える農畜産業に直接支払い。農商工連携の推進。直売所など販売促進の支援、輸出支援。

民主党 民主党 (マニフェスト・政権交代より要旨)
◆戸別所得補償制度で農山漁村を再生
(政策目的)農山漁村の6次産業化、主要穀物等では完全自給をめざす小規模経営の農家を含めて農業継続、農村環境を維持、(具体策)農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本とする「戸別所得補償制度」を販売農家に実施。規模、品質、環境保全、主食用米からの転作等に応じた加算、畜産・酪農業、漁業に対しても導入。「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入(所要額)1.4兆円程度
◆食の安全・安心を確保する
(政策目的)▽国民が安全な食料を安心して食べられる仕組みをつくる。食品安全行政を総点検する。(具体策)食品トレーサビリティシステムの確立。加工食品等に原料原産地表示。国際食品調査官を配置、輸入検疫体制を強化、BSE全頭検査の国庫補助復活、輸入牛肉条件違反には全面禁輸等の対応、食品安全庁の設置。(所要額)3500億円程度。

共産党  共産党 (総選挙政策から要旨)
◆農林漁業の再生で食料自給率を高め「安全な食料を日本の大地から」を実現。
価格保障・所得補償の実施。不足払い制度で米では当面1俵1万7000円以上確保。直接支払いで1万8000円以上。政府買入で米価下落低下防止、農業経営の強化に取り組む経営者、農協、協同組織に機械導入・更新や事務コストに助成拡充、多様な家族経営を担い手対策の中心に据える、月15万円3年間の新規就農者支援制度を創設、食料主権を尊重、WTO農業協定を根本から見直し、農と食に重大な打撃を与えるFTAには反対。MA米の義務的輸入中止、米改革見直し。
社民党 社民党 (衆議院選挙公約2009より要旨)
◆自給率アップと食の安全
農林水産業に直接所得補償を創設。条件不利地、環境配慮農法には上乗せ。強制的な減反は廃止。当面は食料自給率60%をめざす。小麦の20%を米粉、飼料の30%を飼料米でまかなう。小規模・家族農業を支え株式会社参入を監視、食品トレーサビリティ、原料原産地表示の義務化、食料主権の立場からWTO改革、FTA政策の見直し。

 

 

                    国民新党新党日本

 

 


◆自給率向上をどう実現するのか

 麻生太郎首相は7月31日の記者会見で「改めるべきは改め、伸ばすべきは伸ばすという視点に立つ」と述べ「行きすぎた市場原理主義は改める」と強調。
 農政では食料自給率50%をめざして「考えられるすべての対策を講じる」とし、農家所得の最大化の実現と農山漁村の活性化のための着実な実施などを掲げ「これらの施策はすべての意欲ある農家を支援対象とし、面積・年齢要件は撤廃」と明記した。生産調整については「不公平感の改善を図る」とされた。
 一方、民主党の鳩山由紀夫代表は7月27日の会見で「官僚まかせの政治から国民が主役になる政治への歴史的な転換点にいる」と政権交代選挙を強調した。 農業政策は同党が掲げてきた農業者戸別所得補償制度の導入が柱。マニフェストでは工程表も提示し、同制度は22年度に調査やモデル事業を実施して23年度から本格実施するとした。対象は販売農家。経営規模、品質、環境保全の取り組みなどに応じて加算する。また、同様の仕組みを畜産・酪農にも導入することを明記した。
 公明党も農業政策を重視。緑の産業革命として環境政策とともに農業を位置づけた。米価下落の影響緩和対策の充実などを盛り込んでいる。共産党は08年に農林漁業再生プランで示した価格保障・所得補償制度の導入を掲げ、社民党は本格的な直接支払いを導入するとともに、強制的な減反は廃止し生産者の経営自由度を高めることによって自給率向上をはかるべきだとする。 国民新党は自給率50%に引き上げるため米食の拡大、飼料用米増産などで「減反政策を抜本的に見直す」としている。また、新党日本は「農地総合評価制度」導入で所得補償の基準を明確化することや、原産地呼称管理制度の導入で自給率向上を図ることを提唱。
 未来につなぐ選択を考えたい。

 


◆如何なる政権であれFTA断固反対!!

日米FTA断固阻止・WTO農業交渉対策全国代表者緊急集会 JA全中と全国農政連は8月7日、東京・港区の虎ノ門パストラルで「日米FTA断固阻止・WTO農業交渉対策全国代表者緊急集会」を開き、「日米FTAは日本農業を崩壊させる。断じて認めることはできない」と訴えた(関連記事)。

(2009.08.12)