民主党は、8か月前の政権交替による農政転換で、悪名高い選別政策をやめ、新しく全ての農家を対象にした直接支払制度をつくり、農家の所得がこれまでのように底なしに減ることに歯止めをかけ、農業を振興しようとしてきた。このいわゆる岩盤対策を作ったことは、高く評価できる。
しかし、この制度だけでは充分でない。この制度があれば、米価が下がっても、生産費が保証されるから、農家の収入が生産費以下に減ることはないというが、それは早計である。
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市場では、買い手はあらゆる智恵をしぼって安く買おうとする。買い手は次ぎのように考える。この制度があれば米価がどれほど安くなっても、生産費が保証されているのだから、売り手、つまり農家はソンしないだろうと考える。だから安心して安く買おうとする。売り手は次ぎのように考える。この制度で生産費が保証されているから、米価が安くなってもソンしないと考える。
結局、買い手は安く買ってトクをし、売り手は安くなってもソンもトクもしない。ソンをするのは政府だ、ということになる。
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このように考えて、米価の下落を放置したばあい、米価はどこまで下がるか。それは国際米価になるまで下がる。欧米だったら、国際米価よりも下がれば、輸出業者が買って輸出するだろう。わが国のばあいは、米価は国際米価の3000円(玄米60kg当たり)程度になって、餌としての価格に限りなく近づくことになる。いずれにしても、いわば、自然に国際米価に近づくだろう。
そうなれば、政府が負担する金額は莫大な額になる。そして、やがて国民の反対でこの制度は崩壊するだろう。米価は安くなったままになる。農家は生産費を保証されなくなってソンをする。これでは農業が衰退し、食糧安保は危機にさらされる。
このような民主党農政は、やがて修正することになる。どこを修正すればよいか。
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民主党農政の、これまでの誤りは、米価が国際米価の3000円にまで下がることを直視しなかったことにある。だから、直接支払制度を過大に評価しているし、米の輸入自由化について、その影響を深刻に考えていない。
では、どうすればよいか。それは米価の下落に歯止めをかけることである。そのためには、8か月前に公約した300万トンの棚上げ備蓄を、誠実に実行することである。また、米粉などの新しい需要の開拓を、強力に支援することである。そうすれば、需給が引き締まり、米価は下げ止まるだろう。
新しい農水大臣に対して、食糧安保のために食糧自給率の向上をねがう大多数の国民は、農業振興のための、こうした政策に全力を傾けて、着実かつ早急に実行することを期待している。
(前回 風土を生かした日本型畜産の構築を)
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