「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦は、「日本人の自然観」という随筆の「日本の自然」の後段で、「こうして発達した西欧科学の成果を、なんの骨折りもなくそっくり継承した日本人が、もしも日本の自然の特異性を深く認識し自覚した上でこの利器を適当に利用することを学び、そうしてただでさえ豊富な天恵をいっそう有利に享有すると同時にわが国に特異な天変地異の災禍を軽減し回避するように努力すれば、おそらく世界じゅうでわが国ほど都合よくできている国はまれであろうと思われるのである。しかるに現代の日本ではただ天恵の享楽にのみ夢中になって天災の回避のほうを全然忘れているように見えるのはまことに惜しむべきことと思われる。」と述べられていますが、この部分を森島氏の文章から思い起こしました。
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寺田寅彦さんは「しかるに現代の日本ではただ天恵の享楽にのみ夢中になって天災の回避のほうを全然忘れているように見えるのはまことに惜しむべきことと思われる。」と警告されていましたが、今、改めて噛みしめるべきでしょう。
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私たちは自然や歴史と一体になって、地域社会や国土環境を歴史的に築き上げてきたのですが、いつからか自然と人間を分けて科学万能と思いこみ、同様に社会と人間を分けて歴史を分断し人間の能力万能という驕りに至り、大自然や人類の営みへの敬虔さを喪失しました。今回の大震災が多くは人災と言われるのは、古来私たちが大切に守り育んできた大自然と悠久の歴史への謙虚な心のあり方を喪失したからに他ならないと思います。
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農業は自然相手の産業です。そうであるからこそ、農業やその関係に携わっている人々は自然の有難さとともに、恐ろしさ、偉大さを身にしみて感じているものと思います。私は、今こそ、新たな基本計画の「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造の理念を、農業者やその関係者から国民全体に普及浸透させて、日本の心を甦らせる時と思います。
(前回 メルトダウンした日本の政治)
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