コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
TPP推進派巨頭の経団連会長が暴言

 経団連の米倉弘昌会長は、以前からTPP参加をくりかえし主張していたが、昨日、またしても、そうした主張をした。記者会見で政府・与党に対して「選挙など考えず、国益を念頭に頑張ってほしい」という発言をした。
 多くの国民が反対しているのを無視して、一刻も早くTPP参加の決断をせよ、という趣旨である。これは、口が滑ったでは済まされない暴言である。
 テレビ各局や新聞各紙などのマスコミは、早速これを取り上げて報道した。会長は、ついでに農水相に対しても「弱腰では困る」と非難した。
 マスコミは、「弱腰では困る」という発言に焦点を当てて取り上げている。これも問題だが、「選挙など考えず・・・」の発言は、見逃せない。民主主義を否定する重大な発言である。
 経団連がいう「国益」とは、国民の利益を犠牲にし、国民の意志を無視し、民主主義を否定した私企業の私利私欲を意味することが分かった。
 それは、民主主義から最も遠く離れた対極にあって、民主主義と敵対している。経団連には、これほど露骨に反国民的な発言をくりかえす会長は、嘗ていなかった。

 TPP参加を決めれば、与党は次の選挙に勝てない、と経団連は密かに考えていることも分かった。
 それゆえ、与党を安心させるために、TPP参加を決めても、経団連が支持するから選挙に勝てる、だから、そのことは考えなくていい、といったのだろう。
 経団連会長という巨頭がそのように言ったのだから、巨頭の言うことをきけば次の選挙に勝てる、と思わせたいのだろう。

 いったい、会長はどのようにして選挙で勝たせるのか。巨頭だから、でまかせを言うはずがない。
 経団連はカネは持っているが、株主総会と違って政治の選挙権を持っていない。それは民主主義の根幹である。
 だから、この発言は、経団連の主張に同調すれば、カネ、つまり選挙資金を与えて選挙に勝たせる、という趣旨だろう。カネで政治を支配する、という思想である。この思想は民主主義を根本から否定する思想である。
こんどの経団連会長の発言が暴言だ、というのは、このことを指している。

 経団連会長の発言には、その他にも問題がある。
 「一日でも早く交渉の場につくべきだ」といい、「・・・駄目なら批准しなければいい」という。だが、参加を決断しなければ、交渉の場にもつけない。このことは、昨年末のTPP会合で、日本は苦い経験をした。オブザーバーとしてさえも出席を許されなかった。
 だから、交渉の場につく、ということは、参加を決断することである。このことは銘記すべきことである。
 駄目なら批准しなければいい、などというのは、責任のある巨頭がいうべきことではない。

 巨頭の発言だから、こうしたことを全て知っていての発言だろう。趣旨は、政府にTPP参加を強く要求することだった。そして国民に納得させることだった。そうして、ともかく交渉に参加させ、後になって交渉に努力したが、努力が実らず、止むを得ずにTPP協定を認めた、と言いたいのだろう。
 そのために、なりふりかまわず甘い発言をしたのだろう。巨頭が切り札を切ったのである。無責任どころか狡猾と言わざるを得ない。

 こうした反国民的で反民主主義的な発言を見逃すわけにはいかない。
 これに応えるには、今月の26日に計画されているTPP反対集会を成功させるなど、TPP参加に反対する全国民的な意思を強く示すことだろう。

 

(前回 TPP参加を主張する経団連と連合

(前々回 効率主義に傾く民主党農政

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(2011.10.12)