TPPは、アジア太平洋地域に位置する全ての国を含む自由貿易圏構想のFTAAPの実現を目指しているし、ASEANもFTAAPをめざしている。目的地は同じで、そこへ到るまでの道筋が違うだけだ、という人がいる。目的が同じだから、道筋にこだわることはない、TPPでもいいではないか、というTPP推進派がいる。
だが、そうだろうか。
◇
政経分離という言葉がある。政治体制が違っていても、それを乗り越えて経済交流はできるし、積極的に交流しよう、という考えである。
この考えは、互いに相手国の政治体制を認めあい、尊重しあう、という相互の理解があって、その上での経済交流である。
しかし、アメリカが主導するTPPには、こうした考えはない。アメリカの政治、経済体制が唯一つ正しいものだ、とする独りよがりの考えである。そうして、それを相手に押し付けようとしている。
◇
たとえば、医療制度をみると、アメリカの制度こそが最善で、それと違う日本の制度はよくない、と考えている。だから、日本の医療体制をアメリカのように変えることが正義だ、と考える。
医療制度だけではない。日本の保険制度や公共調達や、移民制度までもアメリカと同じにせよ、と数年前から要求し続けている。日本をアメリカ化したいのである。
日本だけではない。アラブ地域のアメリカ化に失敗したアメリカは、こんどはアジアのアメリカ化、ことに中国のアメリカ化を狙っているのだろう。そのためのTPPだろう。
◇
こうした状況を考えると、日本のTPP加盟は、アジア太平洋地域の政治対立の一方に加担し、その対立を煽ることになるだろう。しかも、農業を崩壊させるなど、国の存亡にかかわるほどの犠牲を払ってである。
政府は、「参加交渉」などと回りくどいことをいって、情報を隠蔽しながら時間をかせぎ、土壇場になってTPP加盟を決めようとしている。
日本はTPPに加盟するのではなく、米中両国の文化を理解する数少ない国として、両者の対立を超え、両者の架け橋になって、アジア太平洋地域を、豊かに安定した地域に作りあげる努力をしなければならない。
(前々回 所得補償制度にはトゲがある)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)