首相の考えは、こうだろう。TPPに加盟するという自分の考えは正しい。だが、以前は国民の理解が充分に得られなかった。だから加盟を表明しなかった。しかし、いまは充分に理解されたとして、表明する機会を狙っている。油断はできない。
ここには、自分の考えが正しいかどうか、についての疑いは全くない。だから、反対派の主張は、誤りにきまっている。それゆえ、聞く耳を持たない。
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さらに深刻なことは、何が正しいことか、についての考えもない。首相は国益を追求する、というのだが、財界がいう国益と、大多数の国民がいう国益とは、全く違う。何が正義か、という考えもないまま、正義を振り回している。
こうした状況のなかで、政府は、いったい誰にとっての国益を追求するのか。労働者や消費者の利益を追求するのか、それとも、財界の利益を追求するのか。99人の国民の利益か、1人の国民の利益か。それによって、正義は不正義にもなるし、不正義は正義にもなる。
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このことが分からないのは、民主党の悪しき伝統かもしれない。前首相も前々首相も、理科系の首相だった。理科には、真理は1つしかない。だが、社会、ことに政治の世界では、真理は1つではない。誰にとっての真理なのか、が問題である。
現首相も、理科系頭脳なのかもしれない。だから、このことが分かっていない。早く自覚して、矯正しなければならない。
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反対論に聞く耳を持たないのも、理科系頭脳の特徴である。自説が正しいのだから、反対論は間違いだ。だから、なすべきことは、反対論に耳を傾けることではなく、反対論を説き伏せることである。理科系は、このように考える。
だが、ここには落とし穴がある。まともな理科系頭脳なら、自説が正しいかどうか、慎重に吟味する。そして反対論に耳を傾ける。
まして、政治の世界では、自説だけが正しい、というのでは、議論はできない。
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TPPにしても、原発再開にしても、政府は、国民の理解がえられるまで決めない、という。これは、正論である。だが、無知蒙昧な国民が理解できるようになるまで待つ、という意味にもとれる。それは、昔の支配者の考えである。
ここには、政府の考えが、国民に理解されないのは、政府の考えが間違っているからかもしれない、そうだとすれば修正しよう、という考えは全くない。もしも、政府が自身の無謬性を誇りたいのなら、それは時代錯誤の迷惑でしかない。
支持基盤の亀裂を修復したいのなら、このような考えを一刻も早く反省し、修正しなければならない。そして、TPPに日本の未来は託せないことを覚らねばならない。
(前回 TPP問題で朝日新聞が空論 )
(前々回 TPP交渉で翻弄される日本外交)
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