交渉中のアジア4カ国の人口は、合計1.22億人で、アジアの人口41.6億人の3%でしかない。アジアのごく一部にすぎない。その経済成長を取り込むために、TPPに加盟して多大な犠牲を払え、というのだろうか。
今後、多くのアジアの国が加盟することが期待されるのなら、その主張も成り立つかもしれない。だが、それは期待できない。大国の中国をはじめ、多くの国が加盟するとは思えない。
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TPPには、アメリカ大陸とオセアニア大陸、つまり、大航海時代に西欧に「発見」された新大陸の諸国と、それとは異質なアジアの4つの国とが混在している。
新大陸とアジアとでは、社会の成り立ちが違うというだけではない。そこにくり広げられている農業が、全く違っている。
新大陸の農業は、広大な農地の上に営まれている大規模機械化農業である。穀物生産などの機械化農業は規模が大きいほど有利である。それに対して、アジアの農業は、その数百分の1という小規模な農地で営々と行われていて、ことに穀物生産では不利な農業である。
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この2つの農業の産物をゼロ関税で競争させよう、というのがTPPである。それでは、アジアの小規模農業は存続できない。集約的で付加価値の高い農業に変えればいい、というが、問題は農村の貧困問題というよりも、主な問題は食糧安保の問題なのである。つまり、機械化農業の産物の穀物の問題である。付加価値の高い穀物といっても、たかがしれている。
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TPPが、ゼロ関税に固執するかぎり、アジアの加盟国の農業は存続できない。それゆえ、食糧主権は守れない。そうかといって、TPPにゼロ関税の大原則を棄てさせることもできないのなら、アジアの国々にTPP加盟を求めることはできない。
TPPは、東太平洋だけのFTAにとどめるべきである。そうして、似たような歴史と風土を共有する新大陸国どうしが切磋琢磨すればよい。アジアの経済発展に貢献したいのなら、TPPとは別な方法で真摯に考えるしかない。
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政府は、そうした毅然とした姿勢で静観していればいい。だが、前のめりの姿勢を続けている。そうして、TPP加盟の条件として、当面、自動車、保険、牛肉のBSE問題で譲歩をせまられ、すでにBSEでは譲歩してしまった。かんぽ生命は、がん保険を見送ったし、昨日の新聞報道では、自動車分野でも妥協しようとしている。
前のめりな姿勢とは、こうした姿勢のことである。加盟交渉に入る門前で、すでに、こうした譲歩をしてしまった政府に、国民は怒っている。
(前回 TPP問題で政府の支持基盤に亀裂)
(前々回 TPP問題で朝日新聞が空論)
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