この記事は、日本べんとう振興協会が農水省に対して、主食用米の輸入枠を増やすように要求したが、農水省は「内規」を理由に、輸入枠を見直さない考えだ、というものである。それは不当なことだ、という考えが行間ににじんでいる。
農水省は「見直さない」のではなく、法律によって、見直すことが出来ないのである。そんなことをしたら、法律無視の官僚独断になってしまう。朝日新聞は、まさか農水省に対して、法律違反を唆そうとしているのではあるまい。それは、まさに犯罪的である。
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主食用の米とはSBS米のことである。そして、SBS米はMA米の一部である。
MA米は、20年前のGATT交渉で、日本は米の関税を高い水準に設定する代わりに、一定量輸入することを約束させられた米である。食糧自給率がきわめて低いのに、また、減反をしているのに、米の輸入を約束してしまったのである。
このような屈辱的な約束をする見返りとして、輸入米は決して国内の需給に影響しないように、また、減反の強化にならないように、として当時、国会決議や閣議決定が行われた。そうして、輸入米の大部分を加工用や飼料用や海外援助用にし、主食用のSBS米はMA米の10%に制限することにした。
その後、毎年、新食糧法に基づき、農政審議会の意見を聴いて、同法の第四条2項四で規定した、その年の「米穀の輸入数量及びその種類別の数量」を定めている。こうして、今年のSBS米の輸入量を10万トンに決めたのである。つまり、農水省が主食用米の輸入量を勝手に決めているわけではない。
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だから、農水省を批判するのは、無意味なことである。批判するなら、もっと堂々と新食糧法を批判すべきである。それは、新食糧法の立法の主旨への批判になる。そのためには、立法の主旨を勉強し、理解しなければ批判にならない。
立法の主旨は、日本農業の存続と食糧安保である。だから、それに対する批判は、日本農業は崩壊してもいい、食糧安保はどうでもいい、という主張になる。
こうした主張は、大多数の国民から支持されないだろう。だから、実現できない、反国民的な、空しい主張になるだろう。
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