先日、鳩山由紀夫(衆、北海道9)元首相は、世間では、民主党は自民党野田派になった、と揶揄されていることを、記者団に話していた。そんなことを言われたら、自民党も不愉快だろう。だが、うまく言い当てたのもだ、と思った人は少なくなかったろう。
民主党は、3年前に自民党から政権を奪い取ったときの初心を、すっかり忘れてしまったようだ。その後も、グリーン・イノベーションといって、再生可能エネルギーを普及する、と言っていたのに、原発の再稼動を順次進めようとしている。
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こうした中で、政府は再稼動のための、アリバイ作りをしている。
いま政府は、将来のエネルギーの原発依存度を、どの程度にすべきか、を国民に聞きたいとして、全国の各地で意見聴取会なるものを開いている。
この会は、その運営がずさんで、おざなりだ、として批判されている。国民といっても、実際には電力会社の幹部や社員の原発推進の意見を聞いている、という批判や、せっかく全国各地で行われているのに、地元でなく、東京などの他の地域の原発推進の人が多く含まれている、という批判である。しかも、9人の意見を聞くだけで、質問もできない。
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こうした批判も、さることながら、もっと根本的な批判がある。
この会は、政府が示した3つの案についての意見を聞くものだが、この3つの政府案は、2030年の原発依存割合を、0%、15%、20〜25%の3つ案のうちの、どれにすればいいか、というものである。ここに重大な問題がある。
政府の意図は透けて見えている。政府は、この3つの案の中間の15%を期待しているのだろう。期待どおりになれば、政府は、今後この錦の御旗をかざして、次々に原発を再稼動できる。まさか、0%にせよ、という結論にはならないだろう、と期待しているのだろう。
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だが、そうはいかない。昨日の大抗議集会は、原発の再稼動に反対する集会だった。原発依存度をゼロにしないで、大飯原発を再稼動したことに抗議する集会だったし、今後、原発依存度をゼロにすることを要求する集会だった。それが、過去最大の規模になったのである。
集会には、いまも原発被害に苦しんでいる福島の人たちが大勢参加していた。国民は、福島の惨状に目をつむることはない。29日には、再び大規模な抗議集会が計画されている。
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この抗議運動は、「あじさい革命」と言われている。チュニジアの「ジャスミン革命」を連想させる名前である。「ジャシミン革命」が「アラブの春」をもたらしたように、「あじさい革命」は、長いあいだ停滞していた日本の政治に熱い夏を呼び込むだろう。
安保闘争が、その後の55年体制の発端になったように、反原発運動は、TPPなどの市場原理主義に反対する運動とともに、今後の政治体制の対立軸を形作るだろう。
そのことを、現実感覚の鋭い小沢一郎(衆、岩手4)新党代表は、いち早く感じとっている。だから、新党の看板に、反増税と並んで脱原発を掲げている。
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政府は、集会に参加した人びとの要求に応えねばならない。経団連の一握りの幹部にも、集会に参加した大勢の名もない人にも、同じ一票の選挙権を認めている「民主」党の政府なのだから。
そうしなければ、民主党には、来るべき新しい政治体制の中で、生き残る余地はないだろう。
(前回 朝日新聞の不勉強 )
(前々回 「あじさい革命」が広がっている )
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