コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
全国35か所の脱原発集会が首相を動揺させた

 先週も金曜日に、「再稼動反対」の大きな声が国会周辺に響きわたった。東京だけではない。群馬の、あるHPで伝えているが、再稼動反対の集会は、下の表に示したように、全国で少なくとも32か所に広がった。これは、全体の一部なのだろう。この他に、大阪や京都や滋賀では、関西電力の前で抗議集会が行われた。
 それぞれが、まなじりを決して立ち向かう、というのではなく、長野の「金デモ」とか、北九州の「ひまわり革命」とか、勝手に名前をつけて、普通の老若男女が集まり、平穏に抗議した。
 また、昨日は広島に原爆が落とされて67年目になるが、平和記念式典に出席した野田佳彦(衆、千葉4)首相は、「脱原発依存の基本方針の下...国民が安心できるエネルギー構成の確立を目指します」(※1、本文の下)と挨拶した。
 首相は、いままで原発に何%程度依存すればいいか、と考えてきた。脱原発依存が基本方針というなら、迷うことなく、原発依存度はゼロにすればいい。この考えに、ようやく首相も近づいてきた。そのことを式典の後の記者会見で表明した。
 これは、いままでの抗議行動の、輝かしい成果である。
 だが、安心はできない。原発依存度をゼロにする、と言い切ったわけではない。「ゼロにする場合には、どのような課題があるのか」を検討する、と言っただけである(※2、本文下)。

colunou1208070202.gif(元となる資料はHP「原発なくてもエエジャナイカ」より

 首相は、「脱原発依存の基本方針」と言いながら、他方で、将来の原発依存度を0%、15%、20〜25%のどれにするか、を全国の各地で国民の意見を「聴聞」している。
 もしも脱原発依存が基本方針と言うなら、将来の原発依存度はゼロしかない。
 脱原発集会で「再稼動反対」を叫んでいる人たちは、原発依存度ゼロを要求している。それを首相は無視してきた。原発推進を主張している経団連が怖かったのだろう。

 こんども、原発依存度をゼロにする、と明言したわけではない。原発ゼロの課題を検討する、と言っただけである。逃げ道を周到に用意している。
 だから、脱原発の抗議行動は、政府が本気で原発ゼロを目指すまで続くだろう。そして全国へ広がるだろう。
 今週の金曜日の集会では、原子力規制委員会人事の撤回と大飯原発の停止を要求するという。人事の問題とは、原子力ムラの人を委員長にして、原発の安全基準を作ろうとしている問題である。それは、原発再稼動のための準備である。

 原発ゼロを本気で考えているのなら、新しい原発は作らないし、いまある原発は再稼動しないのだから、安全基準など要らない。(原発の技術を継承して、「安全な」原発を作り、輸出して儲けよう、という意見とか、あるいは、安全保障のために、原発の技術を使って原爆を作ろう、などという物騒な意見もあるが、それはそれで危険な重大問題である。)
 委員会は原子力ムラの人を除いて、原発ゼロへの行程表、つまり、廃炉の順序を提案してもらえば、それでいい。もちろん、現在稼動中の大飯原発は停止する。

 政府が、デモの参加者からの信頼を得るためには、退路を断って、つまり、経団連の脅しに屈することなく、脱原発依存の基本方針を、つまり、原発ゼロを、本気になって明言することである。
 その上で、政府は福島の苦悩を正面から見据え、福島を3.11以前の状況に回復しなければならない。それは、不可能に近いが、そこに少しでも近づけるよう、全力を注がねばならない。

※1 首相の挨拶はコチラから

※2 首相の記者会見はコチラから



(前回 脱原発デモと経団連が政治を動かした

(前々回 消費増税、原発、TPP、オスプレイ


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(2012.08.07)