コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
脱原発デモに戸惑う首相

 「再稼動反対」の金曜デモが続いている。
 デモの代表者は、野田佳彦(衆、千葉4)首相との面会を要求していたが、ようやく、面会するようだ。これには、菅直人(衆、東京18)前首相が行った現首相に対する要請が、強く影響したようだ。これは、デモの大きな成果である。
 首相は10日の記者会見で「賛成の方、反対の方、それぞれのいろいろなお立場の方の声に耳を傾けたい」と言っている(※本文下)。しかし、耳を傾けたふりはするが、政策に反映させない、というのは首相の得意技のようだ。あまり期待しない方がいいかもしれない。
 デモの参加者は、立場上で反対している訳ではない。そのことを首相は分かっていない。再び福島の惨禍をもたらさないために、そして、子供たちの尊い生命を守るために、自分たちの生活を守るために反対しているのである。経団連のように、私利私欲で賛成しているのとは、志の高さがちがう。

 もう1つの、デモの成果は、新聞が伝えるように、政府が原発政策へ国民の意見を反映させるとして、新しい専門家の会合を検討しだしたことである
 だが、ここにも問題がある。原発再稼動の意図がありありと見える。それは、専門家を隠れ蓑にして、「再稼動反対」の叫びを無視しようというのだろう。

 政府は、去る6月29日に、2030年の発電量に占める原発の割合を、0%、15%、20〜25%にする3つの案を発表し、その後、国民の意見を募集した。それを昨12日に締め切ったので、その結果を専門家に検討してもらおう、というのである。
 この世論調査は、出発点の問題提起のときから問題があった。このような3案なら、まさか0%案を支持する、という極端な意見が多数にはならないだろう、中庸の15%に落ち着くのではないか、という思惑があったとしか思えない。そうなれば、今後も原発を再稼動できる、というたくらみである。

 だが、再稼動反対のデモの人たちは、0%案の支持者である。デモには空前の人数の人たちが集まり、全国の各地に広がっている。それが大多数の国民の意見なのである。
 だから、国民の意見を反映させる、というのなら、この世論調査の結果を検討しても無意味である。原発政策に対する国民の意見を聴きたいのなら、どのようにして、原発をゼロにするか、という世論調査でなければならない。そうして、どのようにして、原発を廃炉にするか、また、放射能をもっている、人体に有害な廃棄物をどこで保管するか、でなければならない。
 お盆も過ぎ、猛暑も去ったのだから、大飯原発はすぐに稼動を停止せよ、というのが再稼動反対のデモに参加している人たちの、強い要求だろう。新規の原発再稼動など、もってのほか、という意見だろう。
 専門家会合は、公開されるようだから、厳しく注視しなければならない。


※ 野田首相の記者会見はコチラから

(前回 全国35か所の脱原発集会が首相を動揺させた

(前々回 脱原発デモと経団連が政治を動かした

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(2012.08.13)