3つの世論調査の結果は、上表に示した通りである。
1つ目は、パブリックコメントという名前の公募型世論調査である。その結果は、原発ゼロ案の支持率が87%で、圧倒的に多い。インターネットと郵送とファックスで公募した調査だか、応募した人数は8万9124人だった。。
2つ目は、全国の各地で行った、意見聴取会の結果である。1542人の回答者のうち、原発ゼロ案を支持した人は68%である。これは、電力会社の多数の社員が再稼動を主張するなど、批判の多い調査だった。だが、それでも原発ゼロ案の支持者が大多数になった。
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3つ目が討論型世論調査の結果である。回答者は、僅か285人にすぎない。公募型の300分の1、意見聴取会の5分の1である。その結果は、原発ゼロ案を支持した人が47%だった。この結果を、マスコミが大きく報道したのである。
この調査方法には、多くの批判がある。主な批判は、世論誘導にならないようにするための方策が講じられていない、というものである。つまり、世論を原発再稼動へ誘導したのである。
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この調査は、政府が株式会社博報堂に5775万円で委託したものである。回答者1人あたり20万円という膨大な金額である。
調査の監修委員会は、アメリカの大学の3人だけで構成している。しかも、この調査方法は、アメリカのこの大学が商品登録をしているので、その大学の理解と協力がないと実施できない、というものである。市場原理主義は、ここまで科学を蝕み、その発展を妨げている。
主題とやや離れるが、もしもTPPに加盟すれば、アメリカの企業が、こうした政府調達に参加させよ、と主張するだろう。そして、もしも拒否すれば、ISD条項に基づいて、日本政府に損害賠償を要求するだろう。
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こうした、科学を装った原発推進のムラが、新しく原子力ムラに加わった。世論を原発再稼動へ誘導するためのムラである。
マスコミが社会の木鐸を標榜したいのなら、福島の苦難を直視し、また、毎週金曜日の夕方に、首相官邸に響く「再稼動反対」の大きな叫びに耳を傾けて、世論を原発の再稼動へ誘導するこうした企みを、厳しく糾弾しなければならない。
(前回 脱原発デモに戸惑う首相)
(前々回 全国35か所の脱原発集会が首相を動揺させた)
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