コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
党首選のTPP語録

 2大政党の党首選が、たけなわになった。
 各候補者のTPPに対する政策をみると、野田佳彦氏(衆、千葉4)だけが推進派で、他の8人の候補者は全て慎重派である。野田氏の孤立が目立っている。
 にもかかわらず、野田氏は首相としてTPP参加を表明してしまうのではないか、という危機感が国民の間にある。
 他の8人は慎重派だが、意見の強弱がある。やや詳しくみてみよう。

党首選候補者のTPPについての政見

 10日から15日にかけて、民主党と自民党は東京で公開討論会や記者会見を行った。そこでの各候補者の発言のうち、TPPの部分を表にしてみた。
 はじめに民主党をみてみよう。野田氏だけが推進派で、他の候補者は3人とも慎重派であることが注目される。これほどの重要政策について、党内に対立がある。原口一博氏(衆、佐賀1)は、TPP交渉に参加させない、とまで言っている。これでも1つの政党か、と疑われる。

 自民党は、各候補者とも3月9日に党で決めた「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」という方針を大きく逸脱する人はいない。だが、ここには、TPPに対する甘い期待がある。
 TPPは、全ての物品の関税をゼロにする、という大原則がある。この大原則をアメリカが取り下げるとは、とうてい思えない。条件つきの反対ではなく、無条件で反対と言えないのか。
 関税ゼロだけではない。民主党の赤松広隆氏(衆、愛知5)や鹿野道彦氏(衆、東北)がいうように、TPPの深刻な影響は、食の安全や医療にまで及ぶ。

 食糧の自由貿易について考えよう。これには、さまざまな考えがある。(ここで食糧とは、米や麦などのエネルギー食品のことであって、果物や野菜などの嗜好食品は含まない。)
 食糧主権派、つまり、あらゆる食糧の輸入自由化を否定して、食糧主権を堅持する考えの人がいる。
 この対極に、自由貿易派、つまり、あらゆる食糧の輸入自由化を肯定する考えの人がいる。
 各候補者は、いったいどちらの考えなのか。どちらの考えに近いのか。

 この2つの考えの中間には無数の考えがある。
 米だけは輸入自由化を拒否し、米以外の、その他の食糧は全て自由化する、という考えがある。ちなみに、韓米FTAは、この考えである。
 また、米を含むいくつかの品目に限って自由化を否定し、その他の食糧は自由化する、という考えがある。自由化を否定する品目の数によって、この考えは無数になる。

 各候補者は、いったいどのように考えているのか、明確に示さねばならない。
 自民党の候補者は、政府の外交交渉力の弱さをを指摘するばかりだが、交渉力が巧妙か稚拙か、強いか弱いか、という矮小な問題ではない。
 食糧主権をどう考えているのか、どこに腰を据えて食糧の自由貿易を考えているか、の問題である。


※ 民主党の資料は ココ と ココ(Youtube) 、自民党は ココ(Youtube)


(前回 党首選の争点はTPPと原発

(前々回 「維新八策」でTPP参加を明記

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(2012.09.18)