評価の基準は、いくつかある。
その第1は、政策目的である。3年前の政権交代で、民主党は、食糧自給率の向上を鮮明に掲げた。そして、戸別所得補償制度の目的は、自給率の向上だ、とした。
それまでの自公政権は、この点があいまいだった。自給率の向上と国際競争力の強化とを、同時に目的にした。
第3極はどうするのか。輸入自由化を想定して、国際競争力の強化を農政の目的の中に入れるのか、どうか。国際競争力をつけて輸入を自由化する、と考えるか、それとも、そんなことは出来ない、と考えるか。そして、TPP加盟に反対するか、賛成するか。
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その第2は、農政の対象を全ての農業者とするか、それとも選別するか。
民主党は、自給率の向上に貢献する全ての農業者、つまり、経営規模の大小にかかわらず、また、年齢の如何にかかわらず、全ての農業者を農政の対象にする、といった。この初心の新鮮さもあって、農業者だけでなく、多くの国民の心をとらえ、政権交代を果たした。
だが、この政策はバラマキだ、という批判を浴びて、いまは、たじろいでいる。
第3極はどうするか。構造改革という名前の選別政策に戻って、小農を切り捨てるのかどうか。
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その第3は、市場とどのように向き合うか。
民主党が作った戸別所得補償制度は、生産費を補償の基準にした。これには、具体的な決め方など、いくつかの点で重大な問題があるものの、多くの国民から、農業経営に岩盤を作ったものだ、として高く評価された。
それまでは、補償基準を過去の市場価格で決めていた。だから、市場価格が下がれば、補償基準も底なし沼のように、ずるずると下がって補償金額が減ってしまう、だから再生産ができなくなり自給率が下がる、という強い不安と批判があった。市場原理主義農政とまでは言わないが、市場原理を重視し過ぎていることへの批判である。
そして、自民党は補償の一部を保険にすると言い出した。自助というわけである。
第3極は、生産費を基準にするのか、それとも、市場価格を基準にするのか。そして公助か自助か。
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そして、当面する何よりも重要な政策は、TPPに加盟して、農業を捨て、食糧主権などの国家主権を捨てて、アメリカが主導する世界経済のブロック化という危うい橋を渡るのか、それともTPPに加盟しないのか。
これらの政策合意が、なされないまま、第3極が連合して政権を奪うことになれば、いまの政権のように、何も決められないままで、福島などの復興が放置されたままで、国民不在の醜い政争が延々と続くだろう。
そうなれば、政治不信はますます深く広くなるだろう。そうならないように、今から、あらかじめ監視しておかねばならない。農村の実情に疎い都市政党が多い第3極だから、農業政策は、ことに厳しい監視を怠れない。
(前回 山下説は蜃気楼―その2)
(前々回 山下説は蜃気楼―その1)
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