◆大震災対応が最優先
農水省は戸別所得補償制度の導入により価格政策から所得政策に抜本的に転換し、米の需給調整は選択制に大きく転換したと強調、この点を前回申請時(平成17年)と大きく変わった点だとしている。
これに対して全中は現行食糧法のもと需給と価格の安定を目的とした生産調整政策は変わっておらず、先物取引との整合性は保てないとし、前回の環境に変化はないと反論。半強制的参加か、選択制かといった政策手法は不認可の理由ではなかったと指摘。
また、戸別所得補償制度は「所得政策ではあるが食糧法のもと需給と価格の安定を図るため生産調整である生産数量目標の達成を要件としている。より強力な誘導手法」と強調している。
農水省は先物取引が「生産者にも価格変動のリスク軽減手段を提供」するとしているが、全中は「本当に価格ヘッジが可能なら戸別所得補償制度に加入する必要はなく現行政策と矛盾」と指摘、米価変動交付金による所得補償があるなかで「先物取引による価格ヘッジを二重に実施することは制度矛盾」と反論している。また、同省は「先物市場は取引の目安となる価格を提供」との見解を示したが、「現物取引が1割以下で投機家によって形成される先物価格を米価の指標とすることは問題。まずは現物市場での客観的な指標価格形成の仕組みを確立すべき」と批判している。
JAグループはこのほか主食をマネーゲームの対象にすることの食料安保上の問題点や、何よりも大震災からの早急な復旧・復興が最優先されるべきだとの点もあげて上場不認可を要請した。
こうした点について「農水省見解」は、上場認可は商品先物取引法に基づく「羈束的なものであり自由裁量ではない」ことや、投機資金による過度な価格変動を防ぐため国が値幅制限などの措置を実施するとしている。
ここでいう「羈束的」とは法律の規定に基づく判断であって行政の裁量ではないという意味だが、全中はこの点について「商品先物取引法と食糧法のどちらを優先するのか」「大震災のなか米の需給と価格の安定に向けた対応が最優先ではないか」と反論している。
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