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産地を超えてジャパン・ブランドの確立を  政府が新たな輸出戦略

 農水省は農林水産物や食品の輸出を1兆円規模にまで拡大しようと、10月に「農林水産物・食品輸出戦略検討会」(座長:茂木友三郎キッコーマン取締役名誉会長、農林水産物等輸出促進全国協議会会長)を設置した。11月25日まで計4回の会合を開き、この日新たに5つの戦略からなる提言を取りまとめた。

 政府は2006年、13年までに農林水産物・食品の年間輸出額1兆円をめざすとしたが、07年の5160億円をピークに頭打ちとなり、その後の世界的な金融不安などの影響もあり、例年5000億円前後で伸び悩んでいる。
 さらに現在は、福島第一原発事故をうけて、約40の国と地域が食品の輸入禁止や検査強化などの措置をとっている。
 こうした情勢の中、「輸出の拡大で日本の農林水産業・食品産業の経営基盤を発展・強化させる」ため、「輸出額1兆円水準を実現」しようと、新たな戦略を立てた。
 農水省の輸出促進グループでは、1兆円実現の目標時期について「年末に閣議決定される見込みの国家戦略会議の提言の中に盛り込まれるだろう」としている。

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◆新たな輸出促進団体を設立

 戦略は、[1]原発事故の影響への対応?国家戦略的なマーケティング[3]ビジネスとしての輸出を支える仕組みづくり[4]確かな安全性・品質の確保と貿易実務上のリスク等への的確な対応[5]海外での日本の食文化の発信、の5つのポイントからなる。
 このうち、当面の課題である[1]については、官民協力して諸外国に規制緩和の働きかけを粘り強く進めるとともに、証明書の発行などを求められた場合、迅速に対応できる体制を構築する、などとしている。
 一方、[2]〜[5]は中長期的な戦略となる。
 この中で特徴的なのは[2]の国家戦略的マーケティングだ。
 これまで都道府県ごとに輸出促進協議会などを設置し産地独自の取り組みに任せていたのに対し、新たに品目別の輸出促進団体などをつくり、統一したジャパン・ブランドを確立しようという狙いがある。これは米国や仏の戦略にヒントを得たもので、農水省では「米国食肉輸出連合会やワシントンりんご委員会などをイメージ」し、品目別に主要産地を集約してマーケティングや販売プランの構築、海外拠点の設置などをすすめる考えだ。その核としては「産地、市場、業界団体など色々なパターンが考えられる」としている。

◆EPA等で関税撤廃を要求

 [4]の貿易実務上のリスク等への対応では、具体例として中国へのコメ輸出規制への対応として、くん蒸倉庫の指定拡大などを挙げた。また提言の中では、「輸出の拡大が期待される品目については、EPA交渉等を通じ、相手国に対し…関税の撤廃・削減を要求する」としており、これについて会議では、「相手に関税撤廃を要求しながら、日本に入ってくるものは防ぐ、というのは通じないのでは」といった意見が出た。
 [5]についても「日本食を海外で広めても、食材は安価な現地調達になるのではないか」などの疑問が出た。
 農水省はこれらのうちの一部事業については、すでに輸出拡大プロジェクトとして24年度予算の概算要求の中で13億3300万円の予算を盛り込んでいる。また、「輸出促進の取り組みは6次産業化にあたる」として、24年度予算での創設をめざす「農林漁業成長産業化ファンド」(仮称)も活用して輸出ビジネスを支援していく考えだ。


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