八幡氏は協同組合運動を世直し運動と定義付けた。いま欧米流の経済の流れがグローバル化の名の下に種々の問題を引き起こしている。その対極にあって人と人との連帯を重視する協同組合を組織するわれわれは、国際協同組合年の今年こそ自ら率先して世直し運動を提唱すべきだとする。氏は、昨年3月の大震災を機に『怠れば廃る〜農協運動心得 六か条』を上梓したが、本では書き足らないこともあり、これをどうしても訴えたかったという。
まず、運動者の心得るべき観念として、宿命・運命・使命を挙げた。宿命とは、わが命に宿るものである。それをどこに運ぶ(志を立てる)かが運命、志(わが命)をひたすら尽くし、尽くしきるのが使命であり「生涯農協運動者 功業不知唯尽知」と説く。かつて鹿児島県下で引き起こした農協事業を巡るさまざまな事件にも、そのことを当てはめて失敗を失敗に終らせないために組織が一丸となって、二宮尊徳の言う「開聞」(かいびゃく)の原点に立ち、虚心に取り組んで再建した経過も披瀝した。
その上でJAは地域社会になくてはならぬセーフティネットであるとして、まず「生活営農」を大切にして、その上に立って「農企業」を振興させる政策を展開してほしいと訴える。そのための貯蓄運動は常に必要であり、組合員との対話は欠かせない。だからこそ職員は常に外へ出て組合員の家を訪ね、田畑を回って情報を共有しながら地域協同化に実を積み上げてゆく。それが勉強になって優秀な若手が育ち、組合員の農協離れをなくすことにもなる。それを怠れば農協は廃ると強く訴えた。
(協同組合懇話会 代表委員・山内偉生)
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講演する八幡氏
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