◆水田再生の取り組みを支援
作付け制限は、警戒区域、計画的避難区域で23年産の作付けがなかった地域でも引き続き行われる。
作付け制限は旧市町村単位かまたは「字」単位で実施する。また、25年産での作付け再開に向け以下のような地域の取り組みを国が支援する。
(1)農地の除染の実施―土壌分析などにより各水田を細かく調査したうえで反転耕や深耕などの除染に取り組む。また、稲の作付けに向け有機物の施用など土づくりを推進する。
国と県はこうした取り組みのための費用を負担。除染作業に従事した場合は作業賃を支払う。
(2)水田の保全管理―野菜など稲以外の作物やクローバーなどの地力増進作物、コスモスなどの景観作物の作付け推進。または水田への水張り。国は作物作付けに必要な経費相当額を水田面積当たり定額で交付する。額は取り組みの実態に応じて地域で決めることになるという。
(3)稲の試験栽培―新基準値以下の米が生産できるよう県・市町村が試験ほ場管理を農家に委託。作業経費を国と県が負担。23年産米で新基準値を超過したセシウムが検出された農家については、一戸あたり1か所の試験ほ場を設定することを検討するという。
このほか、作付け制限にともなう東電に対する損害賠償を国が後押しするとしている。
◆地域の米、生産管理を徹底すれば作付け可
ただし、「100bq/kg超から500bq/kg以下」の地域は、一言でいえば「地域の米を全量管理して全袋検査をすることを前提」(農水省・今城食糧部長)にすれば作付けも可能となる。
そのために必要な取り組みは具体的には以下のことが求められる。 (1)作付け前の吸収抑制対策などの実施?反転耕や深耕のほか、カリ肥料や土壌改良剤の投入などによって、除染や放射性物質の吸収抑制対策を講じていることを作付けまでに市町村が確認する。
(2)生産管理の徹底?市町村が体制を整え、▽地域で作付けする水田を明確化し、生育初期までに一筆ごとに耕作者を把握し台帳で管理、▽収穫時期までに誰が、どの水田で、いつ収穫し乾燥調製を行い、米はどこに保管するかを把握し台帳等で管理、▽保管後は放射性物質調査を受けていない米が流通することがないよう決められた場所で確実に管理する。
(3)米の放射性物質調査?県の管理のもと、市町村、JAなどが一体となって飯米・縁故米も含め生産されたすべての米について全袋検査を実施。速やかに調査を行うため乾燥に時間がかかる天日干しは避け、コンバインによる収穫と機械乾燥を行うよう農家に指導する。
(4)新基準値を超過した米の処分?検査の結果、新基準値を超過した米があった場合は市町村が焼却等によって確実に処分されたことを確認する。
市町村はこうした項目を盛り込んだ「管理計画」を策定、県に報告、農水省は県に対して3月8日までにとりまとめて報告するよう求めた。
◆対象面積は1600ha
管理計画がとりまとめられた後、農水省は稲の作付けを行う地域を公表する。そのうえでその地域で生産される米のすべてに「事前出荷制限」を指示する。 この事前出荷制限をかけることで、栽培から収穫、保管までを徹底管理し、収穫後の検査によって新基準値以下であった米袋については出荷を認める、という手順となる。
23年産米で「500bq/kg以上」が検出された24年産で稲の作付け制限が実施される面積は約1000ha。「100bq/kg超から500bq以下」の地域は6000haで農家戸数は約1万戸だという。 なお、「100bq/kg超から500bq/kg以下」の地域でも、セシウムが検出された農家戸数が1〜3戸など限定的な地域では、市町村がその農家が生産した米を適切に管理できれば作付けが認められる地域となる。
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