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関係国との事前協議、中断を JAグループ全国要請集会で訴える

 JAグループは3月8日の全中理事会で「TPP(環太平洋連携協定)についての関係国との協議に関する要請」を決めるとともに、12日には東京都内で「TPP交渉参加断固阻止全国要請集会」を開き、政府が事前協議に臨む対応方針を明らかにしないまま進め、情報開示もしないのであれば、「国民をだます背信行為である」ことなどを強く訴えた。

◆なし崩し、許さず

JAグループ全国要請集会で訴える 集会で萬歳章JA全中会長は、TPP交渉の事前協議に対する政府の対処方針が明らかにされていないにもかかわらず、一部閣僚が交渉参加の判断を既成事実であるかのように発言していることは極めて問題であると批判、こうしたなかで協議を続けていることは「実質的に条件闘争しているとの懸念が払しょくできない」と強く訴えた。
 また、米国はまだ日本に対し具体的要求を明らかにしておらず、豪州も日本の参加を認めていない状況は、各国がそれぞれの「民意を尊重しながら対応しようとしていること」だと指摘、これに対してわが国が何の戦略もなく「なし崩し的に対応することは国民をだます背信行為」と強調し、各政党もTPPに対する公式見解を明らかにするよう求めた。


◆正確な情報開示を

 集会では飛田稔章JA全中副会長が代表要請をした。今回の要請の柱は以下の4つ。
 (1)事前協議に臨む政府統一方針の確立
 ここでは、TPPをめぐっては閣僚などで不統一な発言や、省庁によって情報収集や解釈を個別に行っている混迷した状況にあり、政府としての統一方針が確立されるまでは、関係国との事前協議は中断することを求めている。
 (2)十分かつ正確な情報開示
 外交機密を理由に有利な情報しか開示しない政府の姿勢は極めて問題であることを指摘、デメリットも含め収集した情報は国民に開示することや、TPPに参加した場合の利害得失を政府として統一した試算を行い情報提供することを求めている。
 (3)公正・公平で広範な国民的議論の徹底
 現在、政府は民間が主催する「地域シンポジウム」に参加し説明をしているが、これで政府が説明したことにはならないとJAグループは批判。政府自らが主催し、公正・公平な運営による国民的議論の場を設定することを求めている。
 (4)国益に即した判断基準の明示
 野田首相は昨年11月の会見で「日本の伝統文化、美しい農村は断固として守り抜く」と発言した。JAグループは「国益に即して具体的に何を、どのように守り抜くのか」、その具体的な判断基準や考え方を早期に明示することを求めている。


◆政治家の意味を問う

 集会では政党代表者との討論会が行われた。 コーディネーターの鈴木宣弘・東大教授は「TPPの本質は1%の巨大企業の利益を無理に拡大するもの。世界の大多数が苦しくなる協定ではないか。これを今、止めなければならない。今日は政治家がいることの意味を問いたい」と指摘した。 民主党からは櫻井充・政策調査会会長代理(経済連携PT座長代理)が出席。行き過ぎた新自由主義は改めなければならない、と自身の考えを表明したが党は推進派と2分している現状を説明。ただ、現在の政府の対応について、情報開示が不足していることや、昨年11月に「慎重な対応を」と決めた党の提言を超えていることなどで苦言を呈していることなどを説明した。 自民党からは加藤紘一・総合農政貿易調査会会長が出席。党の基本方針として「聖域なき関税撤廃」を前提にする限りは交渉参加に反対する、との交渉参加の判断基準を決めたことを報告した。
 公明党の石田祝稔・政務調査会副会長は農林部会では反対を決めたが党としての機関決定はまだできていないことを説明、「国益を守る観点が大事」と話した。
 日本共産党の紙智子・農林漁民局局長はTPPは百害あって一利なしとして参加断固阻止という党の方針を説明。また、「国益」とは何かを考えなければならないと指摘、通商国家としての日本の国益確保という主張と一括りにしてはいけないとし、農業や食料自給率を向上させていくことを土台にするべきと強調した。
 また、社会民主党の吉泉秀男・農林水産部会部会長は党としてTPP反対を決めたことを報告。自給率50%を目標にした基本計画に逆行することや、農林水産業が犠牲になって国益が確保されるのはおかしいとして、断固阻止すると強調した。


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