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国産志向にブレーキかけた原発事故 JC総研が畜産物の消費行動を調査

 JC総研は、畜産物などの消費に関するweb調査結果を3月21日まとめた。

 精肉などの消費を2008年から調査しているが、国産肉重視派は減り続けている。牛肉はこの4年間に9ポイントも落ち込んだ。
 とはいっても例えば牛肉の場合、「国産しか買わない」という回答に「国産を買うことが多い」を加えると55%。豚肉は71%、鶏肉は73%で、依然、多数派だ。
 国産重視派が減った要因は、リーマン・ショック以降の経済悪化とデフレ進行だろう。
 さらに国産志向にブレーキをかけたのが原発事故だ。放射能汚染への不安が国産品への不安となった。
 しかし牛肉を食べる頻度は上向きで「毎日食べる」という回答に「週に1〜3日は食べる」人を合わせると27%で前回調査を1ポイント上回った。原発事故後、一時低迷した頻度は回復基調にある。
 今後の国産肉消費は牛・豚・鶏肉とも「増やしたい」が前回よりも4〜4・5ポイント減り、牛肉の場合2・4%に減少した。
 反対に輸入精肉は大幅ではないものの、いずれも「増やしたい」とする人が増加した。
 「食材を減らしたい」という回答が増えているが、理由は前回までは「ダイエット」「カロリー制限」がトップだったが、今回は牛肉の場合、「以前に比べて安全性が気になるから」が40%(前回は7%)に急増した。原因は原発事故とされるが、4月に焼肉チェーン店で発生したユッケなどの問題も響いていると思われる。

精肉購入時の重視点

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◆伸びしろは十分 飼料用米で育てた精肉

 調査は牛乳や飼料用米などについても聞いた。牛乳を「好き」という人は、その理由を「おいしいから」としており、前回の「カルシウムがたくさんとれると思うから」と順位が入れ替わった。
 飼料用米を食べさせた「こめ牛」や「こめ豚」などを「今後(も)買いたい」と答えた人はいずれも20%前後で、前回調査と比べて大きな変化はない。
 飼料用米の認知度は各々数%であり、購入意向はそれ以上にあることがわかる。「今後(も)買うつもりはない」との回答者はいずれも8%前後。「わからない」と答えた人(70%強)の購入意向が増加すれば今後需要が伸びる可能性は十分ある。

飼料用米を使ったこめ牛の今後の購入意向

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◆放射性物質に厳しい子育て世代の主婦


 放射性物質については国産牛肉を買う時に消費者はどの程度リスクを感じるか、1kgあたり500ベクレルという暫定基準値を示して聞いたところ、回答は(1)「基準値以下なら通常価格で購入」が15%(2)「基準値の一定割合なら通常価格で購入」12%(3)「基準値以下で通常価格の半値以下なら購入」8%(4)「放射性物質が検出されたら購入しない」40%(5)「汚染の可能性がある地域産の牛肉は購入しない」16%(6)「基準値にかかわらず国産牛肉は購入しない」4%となっている。
 「その他」の中には「とくに気にせずに買う」や「店で売っているものは安心と思って買っている」など肯定的回答のほうが多かった。
 「検出されたら購入しない」は主婦が47%と割合が高く、単身女性でも43%と高い。とくに30〜50代が高いのは子育て世代であるためと考えられる。
 これに比べ既婚男性は34%、単身男性が32%と低い。

 JC総研は2008年から農畜産物の消費行動をテーマに全国の消費者を対象としたweb調査を実施。
 今回は13回目の調査で2011年11月に実施。有効回答者数は2082人。

【JC総研】
2006年に発足したシンクタンクで2011年に(財)協同組合経営研究所と合併し、旧JA総合研究所から名称を変更した。

 

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