頼みは付け焼き刃のTPP
日米ともに、失墜する政治家への信頼
◆回復しない経済状況
共和党の大統領候補者選びは、この1年間、リベラルと目されるロムニーがずっとフロントランナーでしたが、今年に入ってから保守派を代表してサントラムが出てロムニーを追い越す勢いを示していました。そのほかにギングリッジ、ポールという保守派の候補者もいて4月の初めまで4名の候補者が競い合っていた。
しかし、4月初めのサントラムの撤退宣言でロムニーにほぼ決まったという状況です。今のところあとの2人は降りるとは言っていませんから、その意味では予備選挙は終わったわけではありません。ギングリッチとポール候補が保守派を一本化してロムニーに対抗する動きを示す可能性はないわけではありませんが、まず間違いなくロムニーが8月のフロリダ州タンパで行われる全国大会で共和党の大統領候補に指名されることになるでしょう。
一方、オバマ大統領にとって再選に向けては経済動向が重要です。その指標のひとつが失業率で2009年10月には10.1%まで上昇しましたが、今年の3月には8.2%と低下しました。これがオバマ大統領には有利と言われていますが、ここには数字のトリックがあります。つまり、求職活動をする人が減れば失業率は低下するわけです。
実際、職に就くことを諦めた長期の失業者が増えていることが今回の不況の大きな特徴です。ですから単純に失業率が低下したとはいえない。しかも毎月20万人づつ雇用が増えていたのが、3月は12万人にとどまっています。米国は毎月20万人程度、雇用が増えていかないと本当の意味で失業率は下がりません。どんどん新しい労働者が参入しているからで、これを吸収するように絶えず労働市場が拡張していかなければならないのです。
たしかに景気は以前よりもよくなっていますが、実際はまだ厳しい状況が続いています。逆にいえば就任後に818億ドルという大規模な景気刺激策をやったにも拘わらず、これだけしか回復しないのかという失望感が大きいわけです。オバマ政権の経済政策は失敗したという見方が強いのです。
◆4年前の熱狂どこに?
ですから、1年くらい前には「オバマは一期限りの大統領」と言われていましたが、やや持ち直しているという程度です。不支持率が支持率を依然として上回っており、再選に向けて楽観視はできません。4月の初めに行われた世論調査をみると、たとえばFOXニュース調査ではオバマ支持が42%、不支持が51%です。ギャラップ調査では支持48%、不支持44%です。
オバマとロムニーの一騎打ちの場合、どちらを支持するかという調査では、FOXニュースではオバマ勝利が44%、ロムニー勝利が46%。ABCとワシントンポスト調査ではオバマが51%、ロムニーが44%です。非常に接戦が予想される状況で、これではオバマ再選は大丈夫とはまだ言い切れません。
要するにオバマ支持層のリベラルな人たちはオバマに失望している。4年前のようなオバマ支持の熱狂的な雰囲気はありません。しかも、若者層の離反が目立っています。
(写真)
「ウォール街占拠」。米国市民にも広がる反TPP運動
(続きは 【クローズアップ・米国政治】 大統領選挙 で)
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