萬歳会長は「野田首相が訪米で参加表明するのではないかという心配をわれわれは持っている。鹿野農相からも情報を出して議論をして判断すべきだとのお考えも示しておられる。先日の政府との意見交換のなかでも筒井副大臣からも同様の発言をいただいた」と話し「私たちは交渉断固阻止の基本線は崩していないし、今の状況のなかでは参加すべきではないと考えている」と鹿野農相にJAグループの考えを訴えた。 鹿野農相は野田首相が日米首脳会談でどういう話し合いがなされるかについて萬歳会長ら農業界が大きな関心を持っていることは十分に承知しているとしたうえで、野田首相がワシントン・ポスト紙のインタビューで国内の考え方も二分しており、議論をさらに詰めていく必要がある、との認識を示していることに触れ「米国がどういう考えを示すか注視をしていかなければならない。できるだけ情報を提示しながら国民にご議論をいただくことが大事なことだと思っている」と話した。
農相への要請後、萬歳会長は「われわれは参加断固阻止が基本、最後には撤回をしてほしいという思いで農相にもわれわれの要請を話した。5月のなかば以降にも(政府には)サミットなどいろいろな機会があるようだ。さらにわれわれの思いをみなさんに分かってもらえるようにがんばっていきたいと思う」と述べた。
この日の要請にはJA全農の成清一臣理事長、農林中央金庫の河野良雄理事長、JA全中の冨士重夫専務らも同席した。
(写真)鹿野農相に要請書を手渡す萬歳会長(左)
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またJA全中は4月23日に都内で記者会見を開き、野田首相の訪米を直前に控え、改めてTPP交渉参加阻止への考え方を示した。
萬歳章会長は「一部メディアでは今回の訪米でのTPP参加の正式表明は見送ると報じているが、TPP参加に前のめりな政府の姿勢はまったく変わっていないと認識している」と語ったうえで、野田首相は昨年11月のTPP交渉参加に向けた協議開始の表明で、「各国が日本に求めることの情報をさらに集め、十分な国民的議論をしたうえで国益の視点に立って結論を経ていくと明言したが、政府は協議体制を確立せず対応方針を明らかにしないままで事前協議に臨む姿勢や情報開示の方法も期待しているものとはほど遠い」として「結論を出すまでの過程における国会の役割と権限を明確にルール化することが不可欠だ」と述べた。
また自動車、郵政、医薬品、牛肉、食の安全などの分野で米国がどのような条件を求めているのかまったく見えていないことから「こうした状況での交渉参加の表明は日本国民をだます背信行為で断じて許されないこと」「十分な情報開示と国民的議論の展開、国益の視点に立った具体的な判断基準を早急に定めるべきで、それが明確になっていないなかでのTPP交渉参加の表明は国家として断じて行ってはならないことだ」と改めて強調した。
JA全中は各団体と連携し、全国的な街宣活動を行って国民にTPPの問題点の周知を図っているほか、25日に東京・日比谷野外音楽堂で3000人規模の国民集会を開く。また国内のメディアを通して意見広告を掲載しているが、24日には米国・ワシントンポスト紙に「TPPにあなたの未来を奪わせてはならない。」というコピーの意見広告を掲載、海外の新聞への意見広告は初の試みとなる。
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