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TPP参加判断、「まだプロセスの過程」 鹿野農相が強調

 野田首相が5月の連休に訪米し日米首脳会談でTPP交渉参加を表明するのではないかと一部報道などがあるなか、鹿野農相は4月17日の会見で米国が日本に求めることなどが明らかになっていない現時点で「まだプロセスの過程にある」として参加判断の時期ではない認識を示した。
 筒井副大臣も12日に行われたJAグループとの意見交換の場で、「なし崩し的な交渉参加はしないというのが政府の態度と理解している。5月の連休中にTPP交渉参加表明をすることはないと確信している」と述べている。

◆関税撤廃の原則変わらず

 意見交換の場には政府から石田勝之内閣府副大臣、筒井信隆農水副大臣、河相周夫内閣官房副長官補らが出席、JAグループは萬歳章JA全中会長はじめTPP対策中央本部委員会委員が参加した。
 石田副大臣は4月初めに訪米しているが、JAグループ側からはその結果についての情報開示を求めた。
 石田副大臣は米通商代表部(USTR)のマランティス次席代表、ホーマッツ国務次官などと意見交換し、米国側からは自動車市場の非関税障壁の改善や郵政民営化見直し法への強い懸念が示されたという。石田副大臣は自動車については「感情的という印象を持った」と話し、郵政問題については、米側が「元の郵便局に戻ってしまうかのような捉え方」との認識を示し、法案が議員立法であることから法案成立後に改めてその内容を説明する意向を伝えたという。
JA全中が開いた意見交換会後の記者会見 また、USTRはセンシティブ品目について「交渉のテーブルに載せたうえで包括的な経済連携をめざしている」と説明。一方、この問題については10日に行われた玄葉外相とカークUSTR代表との会談で「物品関税の最終的な扱いについてはTPP交渉プロセスのなかで決まっていくもの」と確認されたことにも触れ、石田副大臣は「私に対する説明とは変化があったと受け止めている」と話した。
 ただし、この問題について意見交換会後の記者会見でJA全中の冨士重夫専務は、関税撤廃の例外が認められるとの確認ではなく「(交渉で決まっていくというのは)当たり前のこと。TPPの原則関税撤廃は変わっていないと認識している」と強調した。

(写真)
JA全中が開いた意見交換会後の記者会見(4月12日)


◆国民的議論の必要性を強調

 17日には米国政府が30日に日米首脳会談を行うと発表した。JAグループ側はこの場で交渉参加入りを表明することはないのかと懸念を示した。
 これに対して筒井副大臣は「現状においてTPP交渉に参加する、しないの表明をすることはないと確信している」と説明。その理由として「政府において交渉参加するかどうか決定する必要があるが、そのためには与党との協議が前提。現在、政府は与党と協議しておらず協議ができるような状況でもない」とし、また「TPPが国益に合致するか否かを判断するためには十分な情報が必要。米国はパブコメ(意見募集)の分析結果を出す段階で日本の交渉参加を支持するともしないとも言っていない」ことを指摘した。
 これに関連して筒井副大臣は「交渉参加するのかどうか、国民的議論を経て決定しなければならない。そのため今の時点で参加を前提とした対策を打ち出すことは間違いだと考えている」とも述べた。 これら筒井副大臣の発言について石田副大臣は否定せず、ただ政府と与党との関係について「政策調査会を通じて党からさまざまな提言、意見を受けている。そのなかで最終的に決定の責任を持つのは政府だ」などと述べた。
 また、TPP参加のメリットとして石田副大臣は「輸出産業がメリットを受ける」と抽象的に回答し、すでに示されている内閣府試算を説明するに過ぎなかった。これに対してJAグループ側からは「関税撤廃で逆に輸入が増加する。関税自主権を持ち主体性を持って判断することが食料安保の観点からも大切だ」と反論した。
 この意見交換で筒井副大臣が日米首脳会談でのTPP交渉参加表明はないと明言したことをJAグループ側は一定の評価をしたが「今後の対応を注意深く見守りたい」(JA全中・冨士専務)とした。また、萬歳会長は「情報開示を徹底し日本の国益は何か、将来はどうあるべきかとの観点で取り組んでいただきたい」と政府側に強調した。
 JAグループは広範な団体の参加で4月25日午後1時30分から東京・日比谷野外音楽堂で「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守り交渉参加表明を阻止する国民集会」を開催する。


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