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幅広い連携でTPP反対に総力―JAグループ特別運動へ  4月25日に日比谷野音で全国集会

 5月の連休に野田首相が訪米して日米首脳会談の場で、TPP交渉の参加入りの決断をオバマ大統領に表明する可能性があると報じられているなか、JAグループは、なし崩し的な参加表明は「国民をだます背信行為であり断じて許されない」として交渉参加断固阻止に向けて総力を挙げて重点的に運動を展開する。4月25日には東京・日比谷野外音楽堂で3000人規模の全国集会を開催する予定で広範な団体との共催を検討している。

◆全品目関税撤廃、多くの国が支持―交渉状況

 政府はTPP協定参加9か国との事前協議から得られた分野別の交渉状況を3月に公表した。
 それによると関税撤廃については全品目を対象に90〜95%を即時撤廃、残りは7年以内に段階的に撤廃すべきという考え方を多くの国が支持していることが明らかになった。
 また、センシティブ品目(重要品目)については、関税撤廃・削減の「除外」や「再協議」は原則として認めず、長期間の段階的撤廃との考え方を示す国も多いと報告された。この問題で合意には至っていないというが、「除外」を求めている国もないという。
 JA全中の分析では、TPP交渉について本年中の合意は困難との見方もある一方で、米国は大統領選挙が本格化する夏までにできるだけ多くの分野で相当な進展や実質合意を目指しているという。ただ、米国内には自動車業界が日本のTPP交渉参加に強硬に反対しているとの報道もあり、「現時点での交渉参加国の拡大は交渉の勢いを弱める」として、日本が現在交渉中の高い水準の貿易自由化・規制緩和を満たす用意があるのかどうかを時間をかけて協議を行う必要があるとの認識に立っているとみられている。
 また、豪州とニュージーランドは日本の交渉参加について態度を保留しているが、米国の対応を模様眺めしているとされる。


◆問われる国会の役割

 国内では民主党の経済連携PTでTPP交渉参加の是非について党内の意見集約を始めることを確認、また、9日から12日までの経済連携PTの櫻井充座長代理らが訪米して情報収集する。しかし、党の意見集約にあたって櫻井座長代理は「経済連携交渉への参加の是非については政府の判断を党が拘束できない」と説明している。党の会議が事前審査の対象としているのは法案であり経済連携で政府が交渉入りするかどうかといった問題は事前審査の対象にならないとの説明が党や政府からなされている。
 一方、政府は参議院の予算委員会(4月3日)で玄葉外相、古川国家戦略相、鹿野農相が「TPPについての今後の意思を決定する場合は、関係閣僚会合のもとでの必要な手続きを得て政府としての考え方を示していく」といった趣旨の答弁をしている。
 ただし、仮にそのような意思決定を政府が行う場合は、国民に対して関係国との事前協議に臨む政府統一方針や、メリット・デメリットの政府統一試算の開示、国益に即した判断基準の提示、さらにそれに基づいた国民的議論の場が設定される必要がある。
 また、民主党は政府の意思決定を党の意見で拘束できない、としているがJAグループは政府が暴走しないよう与党に働きかけを強める必要があるとしている。
 4月5日の全中理事会では改めて「TPPについての関係国との協議に関する要請」を決め、「野田総理の訪米・日米首脳会談において、国民的議論も国民合意もまったくない状況で『交渉参加入りの表明』を行うことは民主的な政治とまったく逆行するもの。国民に対する背信行為で断じて認めることはできない」と強調した。
TPPから日本の食と暮らし・いのちを守る国民集会に6000人が集結。2011年11月8日東京の両国国技館で とくに政府と国会の関係をルール化するよう求めている。
 これまでのEPA(経済連携協定)交渉では産官学共同研究などが行われ農業関係者や専門家も参加して議論を行ったうえで政府が交渉入りした。また、WTO交渉では議長案が公表され国民が交渉の焦点を知ることはできた。
 しかし、TPP交渉はこうした手続きや情報開示がこれまでまったくなされていない。JAグループは要請のなかで「国権の最高機関である国会で特別委員会の設置や集中審議が行われることなく、情報が十分でないままに政府が独断で判断を強行しようとしている」と批判、TPP交渉の秘密性の高さをふまえ「政府が結論を出すまでの過程における国会の役割と権限を明確にルール化」することが必要だと訴えている。
 JA全中は「TPP特別運動対策プロジェクトチーム」を設置、野田総理がなし崩し的に交渉参加入りを表明することがないよう国会議員などへの働きかけなど阻止運動を展開することとしており、4月16日の週からブロック別、都道府県別の要請集会なども開催する予定にしている。また、25日に予定している全国集会には広範な団体と共催する方向で検討、JAグループにも多数の女性の参加を促すほか、一般市民も広く参加できるあり方も検討している。


(写真)TPPから日本の食と暮らし・いのちを守る国民集会に6000人が集結。2011年11月8日東京の両国国技館で
記事:日本の国が、生活が崩壊する  TPPから日本の食と暮らし・いのちを守る国民集会 (2011.11.10)

 

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