◆米産牛、確実に増加
同レターが分析しているのは米韓FTAでの牛肉の扱い。
今年発効した同FTAでは40%の牛肉関税を15年かけて均等に削減していき最終的にはゼロにする。一方でセーフガードの発動も認められているがその要件は厳しい。
セーフガードが発動される輸入数量は発効年で27万tとされ、その後、毎年6000tづつ引き上げられる。すなわち発動要件のハードルは年々高くなる。
しかも、セーフーガード措置として引き上げることができる関税率は発効年から5年間こそ現行関税の40%だが、その後は30%、24%と頭を押さえられ、関税撤廃後にはいくら輸入が急増しても発動はできない規定となっている。
さらにこれを実際の韓国の牛肉マーケットにあてはめて考えてみるといかにセーフガード規定が無効かが分かると同レターは指摘している。
韓国の米国産牛肉の輸入量は2000年以降、最大で02年の21万t程度。つまり、発効基準数量をはるかに下回っているのが実態で、今後、関税が削減されていくことを考えれば「米国は韓国にセーフガードを発動させることなく、牛肉市場のシェアを年間6000tづつ(セーフガードの発動要件の増加分)獲得していける計算になる」。
◆壊滅してから発動?
同レターは韓国の牛肉消費の実態からも分析した。
同国の牛肉消費量は過去最高で40万t。国産と輸入の割合は現在は1対1だという。今後、韓国の人口は高止まりすることを考え全消費量が40万tのままとして試算すると、関税が撤廃される寸前の15年後(関税率2.7%)のセーフガード発動輸入基準量35万4000tはシェアにして88.5%にもなる。
つまり、米国はセーフガードを韓国に発動させることなく牛肉市場の9割近くを獲得することができ、一方、韓国にとっては9割も米国産に市場を奪われてからでなければセーフガードを発動できないということになる。 つまり、国内畜産がほとんど壊滅状態に追い込まれてからでないとセーフガードが発動できない規定になっているのだ。 同レターはWTO(世界貿易機関)交渉で08年夏、途上国向けセーフガード(SSM)をめぐって米国と中国・インドが激しく対立して交渉が決裂したこともふまえ「米韓FTAのセーフガード規定をみる限り、実効性のあるセーフガードの確保に向けて米国から譲歩を引き出すのは極めて難解な問題」と指摘する。
◆無責任な楽観論
さらにTPP交渉では段階的関税削減が議論されているものの、日本政府の情報収集の結果、「7年以内に撤廃すべきとの考え方を支持している国が多数」とされている。
これと米韓FTAのセーフガード規定と照らしあわせれば「協定発効後8年め以降はセーフガードすら撤廃されるということに他ならない」とも分析、このような検証なしに「重要品目に対してはセーフガードが措置されると楽観論を述べるには無責任」、「米国の関心はいかにわが国の市場を開放させるか。セーフガードを含め米国が対日物品輸出を阻害するような内容をわざわざTPP協定に盛り込むとは考えがたい」と強調している。
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