◆供給高、経常剰余率ともに前年より改善――11年度の事業
日本生協連および全国生協の2011年度の「活動のまとめ」と12年度の「活動方針」については、すでに今年1月に都内で開催された「全国政策討論集会」で討議されており、震災復興支援をはじめとする基本的な方針にには大きな変更はない(参照記事)。
事業面では、1月段階より進捗がみられ、全生協を対象にした総合概況では、組合員数は2688まん人(前年度対比102.6%)と約67万人増加し、総事業高は3兆3622億9300万円(同101.2%)となっている。そのうち医療生協、共済・住宅生協を除いた購買生協の総事業高は3兆440億5100万円(同101.2%)となっている。
全国生協の中心である地域生協についての概況をみると、組合員数は1951万9000人(同103.0%)、総事業高は2兆6840億9500万円(同101.5%)となっている。総事業高から共済事業や福祉事業収入を除いた供給高は、2兆5900億円(同101.6%)となっており、1月段階の数字を上回る結果となっている。
◆大震災の影響で非食品が伸びる
これを事業別に見ると店舗事業供給高は9142億円(同98.2%)と前年度を割り込んだが、宅配事業は1兆6273億円(同103.2%)と前年度を上回った。宅配事業のうち個配だけをみれば9986億円(同105.5%)と、1兆円近くまで伸長してきている。
また経常剰余率も地域生協全体で1.3%と前年度より0.5ポイント、宅配事業が2.9%と同0.4ポイント、店舗事業は赤字ながら同0.9ポイント改善され▲1.6%といずれも1月段階の「微増収微増益」よりも伸長した。
矢野和博日本生協連専務は記者会見で、組合員が増え事業高も増え経常剰余率も昨年より改善され「増収増益」となったと1月段階より評価を高めた。しかしこれは東日本大震災の影響で乾電池などの非食品供給高が増えている(前年度比102.8%、食品は同100.2%と前年並み)による影響が大きいといえることもあって、「競合が厳しいなかで、今年度も同様の伸長」ができるかどうかはわからないとした。
◆個配が生協の事業を支える柱に
そうした問題についてのこの10年間のデータを整理したのが図1、図2、図3だ。
地域生協の供給高を店舗と宅配に分けて見てみると、図1のように店舗事業は05年に1兆円を割り込んだが、一貫して右肩下がりで推移している。
一方宅配事業はほぼ右肩上がりに推移しているが、実態としては「班供給」が02年度の9421億円から11年度推計で5962億円と4割近く落ち込み、個配事業が02年度の4635億円から11年度推計の9986億円とほぼ倍増し、10年度以降は個配事業が店舗事業を上回る実績を上げている。
◆組合員は増えたが1人当り利用高は減少
そして地域生協の供給実績を支えているのは、以前から指摘しているように組合員の増加だといえる。しかし、図2に見られるように、組合員は増えているが「1人あたり利用高」は03年の1万4170円から11年度推計の1万1546円へと2割近く減少している。
これは生協組合員にとっては「生協も食品スーパーやコンビニと同じ“選択肢の一つ”となっている」からといえるのではないだろうか。
図3をみればわかるように、長年にわたって恒久的な赤字経営が続いている店舗事業について11年度は「1人当り利用点数、利用単価は前年を超えているが、利用人数が前年割れを続けて、供給高は前年割れ」となったと総括している。つまり組合員の増加は店舗事業ではなく個配事業に偏っているということだと推測できる。
◆品揃えでSMに負けている店舗事業
さらに店舗の生鮮分野(農産・水産・畜産・惣菜の4部門)の供給構成比を「他企業と比較すると、生協平均37.7に対してSM企業43.9〜47.7%、とりわけ成長部門である惣菜の構成比に大きな差が見られ」るとし、品揃えの改善と店舗内技術の向上で「生鮮分野の営業力強化を図り、利用人数の向上に向けた魅力的な店づくりを進めていくことが課題」だと総括している。
しかし12年度の重点課題には「小商圏で幅広い層に支持される店づくりをめざす」としか書かれていない。これでは最近高齢者も含めて支持されているコンビニのような店をめざしのか、地域に密着し地元住民のニーズに細かく応えることで業績を伸ばしている地域密着型食品スーパーをめざしていくのか、魅力ある生協店舗の将来像が組合員にもみえてこないのではないだろうか。
全国生協に対するこれからの注目は、首都圏における県域を超えた合併が具体的になり、この秋には当該組合の総会で最終承認され、来春には合併が実現することだろう。当該の生協はいずれも店舗主体でこれまで事業運営されてきたが、合併によってどのような魅力的な店舗事業が展開されるのか、そして超大型化した生協で協同組合運動として組合員の意思反映がどのように実現するのかなど注目していきたい。
(グラフは「総会議案」および「資料集」から本紙が作成した)
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