同総研は、日本経済は08年秋のリーマンショックの影響による大幅な落ち込みから回復途上にあると判断できるものの、東日本大震災の影響もあって3年近くにわたって景気の足踏み状態が続いていると指摘。
乗用車など耐久消費財の底堅さや復興に向けた公共事業の進展も一部見られるが、欧州債務危機や中国経済の悪化懸念など、世界経済の減速傾向が続いており「全般的に景気回復のテンポはなかなか加速しない」という。
8月13日に政府が公表した4〜6月期のGDP速報では実質GDP成長率は前期比年率1.4%と4四半期連続でプラス成長となった。しかし、1〜3月期の5.5%(年率換算)とくらべれば大幅な減速となった。その要因には、民間消費に急ブレーキがかかったことや原油やLNG輸入の増加で外需がマイナス寄与となったことなどがあるという。
こうしたなか12年度下期は耐久財を中心に民間消費の不振が続くほか、輸出の勢いも強まらず、復興関連の公共投資増が見込まれるものの、景気回復テンポは鈍いままと予想。
実質GDP成長率は2.2%と予測、前回よりも0.1%下方修正した。1%後半という潜在成長率は上回るものの「震災復興期であることをふまえれば、2%成長という数字には物足りなさが残る」とした。
名目GDP成長率は前回よりマイナス0.3ポイント下方修正し1.3%と予測した。2年ぶりにプラスに転換するとの予測だが、GDPデフレーターは前年度比▲1.0%とマイナス圏からは抜け出せない。
南武志首席研究員は「本来は復興需要がもっと景気に影響をあたえるはず」と被災地の復興の遅れが経済全体の状況にも表れていると指摘する。
2013年度は消費税増税を前にした駆け込み需要を見込み、実質ベースで2.0%の成長率を予測。名目ベースでも1.5%とプラスだが、依然として物価変動を折り込んだ「名目成長率」と「実質成長率」が逆転している状態は続き、デフレが継続するという予測だ。
◆食料価格の高騰懸念
物価の見通しではエネルギーと食料価格の高騰が懸念される。
原油の輸入価格は最近は1バレル90ドル台となっている。同総研は新興国経済の堅調な成長にともなって緩やかだが上昇傾向は続き、12年度は同117ドル、13年度は122ドルと予想している。
食料では米国の70年に1度といわれる干ばつでトウモロコシや大豆が史上最高値を更新するなど高騰している。
これらを受けてエネルギーや食料品価格が上昇すれば、賃金などの所得が伸び悩むなかでは、エネルギーと食品以外の消費を抑制するという実質購買力の低下をもたらす。
それが消費財やサービス全体の需要減退につながれば企業は原料コスト上昇分を価格に転嫁することは難しい。同総研はそうなれば「賃金低下→需要減退→売上高減→コスト圧縮→賃金低下」という悪循環を招くと懸念している。金融緩和策もゼロベースで考え直すなど、デフレ脱却への強力な取り組みが求められていると指摘している。
(関連記事)
・復興需要と輸出が景気を牽引 農林中金総研 (2012.02.20)
・復興需要が国内景気を下支え 農林中金総研の経済見通し (2011.11.30)