これまで日本医師会は貿易の枠組みについては意見を表明する立場にはないとしてきた。 また、日本政府は米国は公的医療保険制度を廃止するような要求はしていないと説明している。
しかし、多くの分野が議論されているTPP交渉では、金融サービス分野で民間保険の参入、投資分野で株式会社の参入、知的財産分野で薬価や医療技術などの規制緩和が対象にならない確証はなく、公的保険制度が対象になっていないとしても「個別分野の規制改革が蟻の一穴になるおそれがある」として「日本のTPP参加について全面的に反対する」と強調した。
さらにTPPは多国間交渉であり米国の要求がそのまま通るわけでないとの見方もあるが、日本医師会は交渉参加国や米国の識者からもその見方は楽観的、との指摘があるとして、米国が日本に対してこれまで医療分野への株式会社参入を求めるなど市場原理導入要求をし続けていることをふまえると、「TPPで門戸を広げてはならない」と判断したという。 会合には日本歯科医師会、日本薬剤師会の代表も参加し同様の見解を表明、日本歯科医師会の宮村一弘副会長は「(TPP参加による影響は)杞憂ではなくリアルな危惧。人の命、人と人とのつながりなど日本が壊れるということ。農業に問題があるといった以前に日本を守らなければいけない。断固反対だ」などと述べた。
また、日本医師会の羽生田俊副会長は次の衆院選など国政選挙では「TPP反対候補を推す。賛成する人は推せない」と明言した。 これに対して出席議員からは地方組織ではTPP推進派の民主党議員を推しているではないか、との指摘があったが、羽生田副会長は「日本医師会としての方針。地方には地方の事情もある」と説明した。さらに議員から「医師会としてのガバナンスを効かせられないのか」と問いかけられると「自民党だって同じじゃないですか」と声を荒げて反論する一幕も。中川俊男副会長も「政治には翻弄されない。政策ごとに判断していくということ」と強調した。
会合ではTPP問題を「自民党総裁選の争点にしなければならない」との意見も出た。
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