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日本生協連に38億円強の下請法違反勧告 公正取引委員会

 公正取引委員会(公取委)は9月25日、日本生協連に対して下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反があったとし、再発防止を求める勧告および指導を行った。

◆販促費用の一部を下請業者に負担させる

日本生協連本社ビル(東京・渋谷) 日本生協連は、プライベートブランド(PB)商品である「CO・OP」マークを付けた食料品や家庭用品などの「コープ商品」と通販カタログ「くらしと生協」オリジナル商品を全国の会員生協に供給しているが、公取委によると平成22年9月から24年6月までの間に、このPB商品の製造を委託している下請け業者に対して、会員生協が「それぞれ商品の値下げ販売を行う際」に日本生協連が会員生協に対して「一時的に納入価格を引き下げる」ため、下請業者に対して「エリアバイイング」として、会員生協に対する「納入する量に一定額を乗じた」額を負担するよう要請し、この要請に応えた下請業者について、下請代金からその金額を差引いたり別途支払わせていたことなど、会員生協が、店舗や宅配事業で特売を行うときに行う値下げ分の一部を下請業者に負担させていたことが、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)違反と認定された。
 そのほか、「全国条件販促条件」や「仕入割戻し」、「新発売・リニューアル・追加供促企画条件」などの名目で「販促費用」の一部を下請業者に負担させ下請代金から差引いたり別途支払わせており、これも「下請代金の減額の禁止」違反と認定された。
 また、下請業者に責任がないのに、会員生協で販売が終了した際の在庫商品を下請業者に引取らせていたのは下請法第4条第1項第4号「返品の禁止」違反と認定された。
 さらに、商品開発のためのテスト費用の一部を下請業者に負担するよう要請し負担させていたことが同法第4条第2項第3号の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」違反にあたると認定された。

(写真)
日本生協連本社ビル(東京・渋谷)


◆違反行為はのべ480社・26億円

 勧告で指摘された違反行為は、
▽「下請代金の減額禁止」449社・25億6331万円強
▽「返品の禁止」6社・484万円強
▽「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」24社・262万円強
となっている。
 これらについて、日本生協連は9月18日までに送金等を終了しているという。
 以上の項目について、▽今後減額を行わない▽返品を行わない▽不当な経済上の利益の提供要請を行わないことを、理事会の決議で確認し、下請法の遵守体制を整備するよう勧告した。
 下請法第2条の2では「下請代金の支払期日」について「60日の期間内」と規定し、第4条第1項第2号では「下請代金の支払遅延の禁止」を規定しているが、日本生協連はこの規定を遵守しておらず、「支払遅延が生じていた」として、下請業者452人に対し遅延利息(利率14.6%)総額13億2335万円を支払うよう指導し、日本生協連は9月18日までに支払った。

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(図は公取委の資料。クリックすると大きなサイズで表示されます。)


◆問われる協同組合の事業のあり方

 日本生協連は販促費用の負担などについては、各下請業者に対して「この生協で、この商品で、こういうセールスを行うので」、と協力要請し、書面も交換し確認して実施しており問題はないと考えていた。そのことが「下請法が定める親事業者の順守事項について理解が不足しており」下請法違反となったとして、原因は法律に対する認識の甘さにあったとしている。
 しかし、小売業界においては、過当競争ということもあって、特売の目玉商品づくりなどのために販促費用をさまざまな名目をつくり業者に負担させることは常態化しているという指摘もある。
 例えば、食品産業センターは毎年「優越的地位」を利用する小売店の実態調査(関連記事:23年度の実態調査結果)を行っているが、これをみても毎年やや改善はされているようだが「協賛金」「センターフィー」「不当値引き・買い叩き」などの事例は後を絶たない。
 拒否しようにもその後の取引きが停止される恐れもあり、小規模業者ほど「断り切れない」という実態もある。
 今回の事例は、過当競争のなか「消費者ニーズ」を隠れ蓑にした「低価格競争」に明け暮れる小売業界の一翼を生協陣営も担っているということを示したともいえる。
 今年は国際協同組合年であり、日本生協連をはじめ生協陣営は積極的にさまざまな取組みを行ってきているが、協同組合運動と組合員(消費者)ニーズに応えようと低価格競争にのめりこんでいる事業のあり方が改めて問われることになったのではないだろうか。


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