『共済総合研究』は平成3年の農協共済総研が設立以来、継続して刊行している論集で、年2回発行している。
第65号では、3月に開催したJA共済総研セミナーでのパネルディスカッションの模様を25ページに渡って再録。「地域社会の再生に向けて」をテーマに民族研究家の結城登美雄氏、JA長野厚生連の色平哲郎氏らが農業と医療を産業論で論じる考え方への批判などを展開している。
巻頭の提言では今尾和實理事長が、韓国農協中央会から経済、金融、共済の各事業が分離され株式会社化された経緯と、その問題点をあげ、「他山の石として学ぶべき」だと述べている。
研究報告は、コメの消費行動分析調査やエネルギー制約の問題など5件。
このうち、総研上席研究員の渡部英洋氏は、自然災害被災者の住宅再建問題について報告している。
平成7年の阪神淡路大震災をきっかけに設立された「被災者生活再建支援制度」は、自然災害で住宅全壊などの大きな被害を受けた被災者に対し、最大300万円を現金支給する制度だ。東日本大震災ではこの支給額が計4400億円に膨れ上がった。しかし、8月末に内閣府が被害予測を発表した南海トラフ巨大地震が本当に起きた場合、この支払総額は数兆円規模になるといわれている。
こうした巨額の支援は困難であるとの懸念から、国の支援制度に頼るのではなく、民間の地震共済を原則皆保険に準じた制度に変え、全国民が加入するように見直すべきだと提言している。
現在、国内の住宅数は約5000万戸。このうち地震保障が自動的に含まれるJA共済の建更や、民間保険会社の地震特約などの加入件数はのべ2600万戸だ。阪神淡路大震災や東日本大震災をうけて地震保障への加入が促進されてはいるものの、いまだに全戸数の半数ほどしか加入していないのが現状だ。
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